天皇陛下がビデオメッセージで生前退位の意向をにじませてから2カ月余。政府の有識者会議の初会合があす開かれる。
メンバーには、これからの時代の象徴天皇制はどうあるべきかという問題意識に立って、掘りさげた議論を望みたい。
陛下のお言葉をうけて多くの専門家が見解を述べ、報道各社の世論調査も行われた。戦前の神権天皇制に郷愁をもつ人をはじめ一部に異論は残るものの、退位を認める方向で国民合意は形づくられつつある。
とはいえ、象徴の座を退いた後の天皇の立場、支える要員、経費、皇位継承順1位となる秋篠宮さまとご一家の処遇、代替わりに伴う儀式の内容など、詰めるべき点は多い。どんな立法形式をとるかもその一つだ。
政府は、いまの陛下だけに適用される特例法を制定することを考えているという。これに対し、皇室典範本体を見直し、退位を恒久的な制度として確立するべきだとする声も強い。
典範改正が筋なのは言うまでもない。だがそうすると、退位の強制を防ぐ一般規定をどう定めるかなど、論点はさらに広がる。陛下の年齢や健康を考え、特例法で緊急かつ最小限の措置を講じるのも、一概に否定されるものではないだろう。
肝心なのはそこで歩みをとめず、引き続き公務のありようや皇室をめぐるさまざまな問題について検討を深めることだ。
とりわけ、皇族の数が減り、将来の活動の維持が危ぶまれる事態への手当てが急がれる。
陛下の孫の世代にあたる皇族は4人で、うち3人は女性だ。民間人と結婚すれば皇室を離れる。このため野田内閣は「女性宮家」を新たに設ける構想を打ちだしたが、安倍内閣に交代してから話は進んでいない。
安倍氏は首相就任前、女性・女系天皇の誕生につながるおそれがあるとして、女性宮家に慎重な論考を発表している。その中で民主党政権を「拙速、お気軽」と批判したが、内閣を率いた後、自らは考えを示すことなく手をこまぬいてきた。
首相が皇室制度を大切だと思うのなら、4年間に及ぶ不作為を反省したうえで、この課題から逃げずに、真摯(しんし)にとり組む姿勢を示す必要がある。
象徴天皇制は主権者である国民の理解と支持がなければ立ちゆかず、そのあり方は国民が考え、決めなければならない。夏以降の動きで、このことに思い至った人は少なくないだろう。
国民に向け、未来に続く議論に資する材料を準備し、提供する。有識者会議の務めである。
メンバーには、これからの時代の象徴天皇制はどうあるべきかという問題意識に立って、掘りさげた議論を望みたい。
陛下のお言葉をうけて多くの専門家が見解を述べ、報道各社の世論調査も行われた。戦前の神権天皇制に郷愁をもつ人をはじめ一部に異論は残るものの、退位を認める方向で国民合意は形づくられつつある。
とはいえ、象徴の座を退いた後の天皇の立場、支える要員、経費、皇位継承順1位となる秋篠宮さまとご一家の処遇、代替わりに伴う儀式の内容など、詰めるべき点は多い。どんな立法形式をとるかもその一つだ。
政府は、いまの陛下だけに適用される特例法を制定することを考えているという。これに対し、皇室典範本体を見直し、退位を恒久的な制度として確立するべきだとする声も強い。
典範改正が筋なのは言うまでもない。だがそうすると、退位の強制を防ぐ一般規定をどう定めるかなど、論点はさらに広がる。陛下の年齢や健康を考え、特例法で緊急かつ最小限の措置を講じるのも、一概に否定されるものではないだろう。
肝心なのはそこで歩みをとめず、引き続き公務のありようや皇室をめぐるさまざまな問題について検討を深めることだ。
とりわけ、皇族の数が減り、将来の活動の維持が危ぶまれる事態への手当てが急がれる。
陛下の孫の世代にあたる皇族は4人で、うち3人は女性だ。民間人と結婚すれば皇室を離れる。このため野田内閣は「女性宮家」を新たに設ける構想を打ちだしたが、安倍内閣に交代してから話は進んでいない。
安倍氏は首相就任前、女性・女系天皇の誕生につながるおそれがあるとして、女性宮家に慎重な論考を発表している。その中で民主党政権を「拙速、お気軽」と批判したが、内閣を率いた後、自らは考えを示すことなく手をこまぬいてきた。
首相が皇室制度を大切だと思うのなら、4年間に及ぶ不作為を反省したうえで、この課題から逃げずに、真摯(しんし)にとり組む姿勢を示す必要がある。
象徴天皇制は主権者である国民の理解と支持がなければ立ちゆかず、そのあり方は国民が考え、決めなければならない。夏以降の動きで、このことに思い至った人は少なくないだろう。
国民に向け、未来に続く議論に資する材料を準備し、提供する。有識者会議の務めである。