[産経新聞] 【主張】豊洲問題で人事　責任の所在解明に生かせ (2016年10月16日)

豊洲市場（東京都江東区）の建物下に土壌汚染対策の盛り土がなかった問題で、小池百合子都知事が都庁の体制刷新に乗り出した。

岸本良一中央卸売市場長ら担当幹部を更迭し、技術職の局長級ポストを新設する。都の統治（ガバナンス）能力の欠如が明らかになった以上、担当分野のトップの責任を問うのは当然である。

過去の失政に決別し、大胆な人事刷新を豊洲問題の解決につなげることが求められる。経緯を解明し、責任の所在を明確にすることはもちろん、市場関係者や消費者が抱く「食の安全」への不安を払拭しなくてはならない。

都議会も豊洲問題を審議するために特別委員会を設置し、議会閉会後も継続して事実解明に当たる方針を決めた。

都議会は都庁の無責任な姿勢を看過してきたといわれてもやむを得ない。特に、豊洲移転で中心的な役割を果たしてきた最大会派の自民党の責任は重い。自ら襟を正し、移転本来の目的を見据え、建設的な議論をしてもらいたい。

都がまとめた先の内部調査は、盛り土をせず地下空間にする計画について、部門間での情報共有が不十分なため、段階的に決まっていったと結論づけた。自分たちで責任者を特定する気などない、と言わんばかりだ。

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建物下に空間を設置するよう求めたのは都側であるのに、内部調査では技術会議の独自提案だとしていた。外部からの指摘で矛盾が判明すると、岸本氏は確認を怠っていたことを認めた。このような調査では不信や疑惑を深めるだけである。あまりに杜撰（ずさん）だが、そこに責任逃れの方便があるとすれば見逃せない。

一連の不始末には、談合などの疑いも指摘される。不正の有無についても徹底的に解明されなくてはならない。小池氏は、より強制的な監察手続きに基づく聴取を実施し、改めて報告書をまとめるという。都政への不信を拭うため、迅速な対処が求められる。

安全性の確認も急がれる。都の地下水調査では環境基準を上回る有害物質のベンゼンが検出された。地下空間の大気からは国の指針の７倍に当たる水銀も検出された。首都圏の台所を担う新たな市場として、ふさわしい施設だと胸を張れるか。その答えなくして前には進めまい。