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[日経新聞] 中国経済の「安定成長」にひそむバブル (2016年10月20日)

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中国の7?9月期の国内総生産(GDP)は前年同期に比べ実質で6.7%増となった。景気減速の懸念があるなか成長率が横ばいだったのは、公共投資や不動産部門が下支えしたことが大きい。とはいえ住宅市場は過熱気味だ。実需の裏付けのない「バブル」の側面もあり、警戒が必要だ。

8月の新築住宅価格は、主要70都市のうち64都市で前月に比べ上昇した。7月より13都市も多い。北京や上海など大都市だけでなく、福建省アモイや安徽省合肥など地方都市の値上がりも目立つ。

その背景には中国独特の事情がある。中国人民大学の聶輝華教授は「今、銀行は2分野にしかお金を貸さない。不動産プロジェクトと、国有企業を含む政府プロジェクトだ」と指摘する。

習近平国家主席がすすめる「反腐敗」運動にともない、銀行は民間企業むけの融資で問題が起きれば規定違反や横領の疑いで調査を受けかねない状況にある。だが国有企業むけなら仮に焦げ付いても「国有経済の発展を支持する」と宣言すれば済むという。

こうした国有企業への融資が不動産市場に流れ込んでいる。国有企業の17%は本業が立ち行かず赤字を垂れ流す「ゾンビ企業」とされる。この比率は民間企業より高い。だが地方当局の手配でなお融資を受けられる国有企業が多く、手っ取り早く利ざやを稼げる不動産へ資金を回している。

こうした事情から、住宅市場の活況は実需を反映しておらず、値上がりを見込んだ投機の側面が強いことがわかる。危うい状況だ。ゆがんだ資金の流れは民間企業の育成をはばむ面もある。やがては中国経済をむしばみ、基礎体力をも低下させかねない。

中国経済を支えてきた輸出はなお振るわない。9月の輸出額は前年同月比10%減で、6カ月連続の減少だった。工業生産は一定の伸びを示し、9月の生産者物価指数(PPI)は久々にプラスに転じたが、こちらも楽観は禁物だ。

習近平政権は過剰な供給能力を削減する「供給側改革」を掲げている。これが本格化すれば基礎製品の生産の伸びは見込めない。

わりあいに堅調なのは個人消費だ。自動車のほか電子商取引を通じた日用品の販売額などが伸びている。消費の刺激で景気を下支えしながら、着実に構造改革をすすめる。そんな難しいかじ取りを中国政府は迫られている。

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