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[読売新聞] 活字文化の日 知の基盤となる公立図書館に (2015年10月27日)

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今日は、文字・活字文化の日だ。読書週間も始まった。本との出会いを求め、図書館を訪ねてみてはいかがだろう。

「死ぬほどつらい子は学校を休んで図書館へいらっしゃい」。神奈川県の鎌倉市中央図書館勤務の女性司書が、8月末に発信したツイッターの文面だ。「改めて図書館の役割を教えられた」などと大きな反響を呼んだ。

いじめを受けるなどして、学校生活になじめない子も、図書館で本の中の様々な世界に触れることによって、自分の居場所を見つけられるかもしれない。図書館は、誰でも気軽に足を踏み入れられる貴重な空間である。

全国には約3200の公立図書館がある。10年間で400館増えた。本の貸し出し数は、年7億1000万冊に達する。

各自治体は、住民が利用しやすい「知の基盤」とするため、創意工夫に一層努めてもらいたい。

蔵書の質やサービスの低下が指摘される点は気がかりだ。この10年間で、書籍代などの資料費は年352億円から285億円に減少した。専任職員も1万4000人から1万人に減った。自治体の厳しい財政事情が背景にある。

民間の指定管理者に運営を委託した公立図書館は、約400に上る。東京都千代田区の区立千代田図書館では、深夜までの開館や、地元にある古書店街の情報提供など多様なサービスが好評だ。

一方、愛知県小牧市では、レンタル大手「TSUTAYA」を展開する企業に、新たな市立図書館の運営を委託する計画が、住民投票で否決された。

この企業が運営する佐賀県武雄市図書館は、おしゃれなカフェの併設などで利用者を大幅に増やしたが、市民から図書の選定が杜撰(ずさん)だといった指摘を受けていた。

民間の柔軟な運営方法を取り入れること自体は、悪くない。ただし、住民に良書を提供するのが、公立図書館の第一の役割であることを忘れてはならない。

利用者の要望が多いベストセラー本の扱いも課題だ。

今年の芥川賞を受賞した又吉直樹氏の小説「火花」のような人気作品は、長期の順番待ちとなることが珍しくない。要望に応えようと、同じ本を何十冊も購入する公立図書館もあるという。

公金で図書を購入する以上、過度に人気にとらわれるべきではない。ベストセラー本の購入は最小限にとどめ、歴史的名作や、個人では購入しにくい高価な書籍などの充実に力を注ぐべきだろう。

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