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[読売新聞] 円借款改革 国際受注競争へ機動性高めよ (2015年11月30日)

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新興国の持続的な成長には、質の高いインフラ(社会基盤)の整備が不可欠だ。政府は、積極的に支援し、日本企業の受注にもつなげたい。

安倍首相がマレーシアのビジネス投資サミットで、政府が長期・低金利で途上国に資金を貸し付ける円借款の改革を表明した。

手続き期間を現在の3年から最大で1年半に短縮する。自治体や国営企業に対する融資条件も緩める。従来は、現地政府が返済を確約する「政府保証」を必須としていたが、相手国の経済が安定している場合などは免除する。

今年9月、インドネシアの高速鉄道計画の受注競争で、日本は中国に敗れた。中国は、インドネシア政府の保証を求めず、短期間で施工する提案を行ったという。

これを教訓に、円借款の機動性と柔軟性を高め、中国に対抗しようとする政府の方針は妥当だ。

首相は、アジア諸国に対して「積極的にリスクマネーを供給する」とも強調した。

政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)は、より高いリスクを取った融資も行う。アジア開発銀行との連携も強化する。首相は今後5年間で約13兆円のアジア支援を行う方針を示している。

急成長するアジアでは、年間8000億ドル(約98兆円)のインフラ需要が見込まれる。政府資金を呼び水にして、民間資金も取り込み、各国の要請に応えたい。

重要なのは、相手国の自立的な発展を後押しするという日本外交の伝統的な理念を貫くことだ。

優れた技術を生かし、強靱(きょうじん)で環境に優しい道路や橋、海底トンネル、発電所などを建設することが相手国の長期的な利益となる。

現地の若者らの技能向上や知識の習得などにも協力すべきだ。

こうした日本の姿勢が各国に評価されれば、日本企業のインフラ輸出の拡大にも役立とう。

環太平洋経済連携協定(TPP)により、マレーシアやベトナムなどでも公共事業の国際入札が広がるとみられる。こうした商機を逃さないようにしたい。

先進国でも高速鉄道事業などを巡る受注競争が激しい。

安倍首相は外国訪問に日本企業幹部を積極的に同行させ、受注に結びつけている。こうしたトップセールスは続ける必要がある。

日本の官民ファンドは今月、米テキサス州で高速鉄道事業を計画する企業への出資を決めた。新幹線システムの採用を目指す。

官民一体となった戦略的な取り組みを進めたい。

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