中国のお金、人民元が国際的な地位を高めている。国際通貨基金(IMF)は、きょうの理事会で、基金の仮想通貨「特別引き出し権(SDR)」の構成通貨に元を加えることを決める。すでにSDRを構成する米ドル、ユーロ、円、英ポンドの主要通貨グループへ仲間入りである。
SDRへの採用は、国際通貨としての二つの重要な要件を満たしたという、一定のお墨付きでもある。要件とはまず、世界貿易で主要な輸出国であること。そして、自由に取引できる通貨であることだ。
中国はすでに日本や英国をしのぐ輸出大国であり、1番目はクリアしていた。しかし、2番目の取引の自由度については、他の主要通貨に水をあけられていた。5年に1度、構成通貨の点検を行うIMFが前回の2010年に、人民元のSDR入りを見送ったのはこのためだ。
今でも人民元や中国の金融市場には、さまざまな問題が残っている。中国から国外に持ち出せる金額には上限が設定され、海外の投資家が中国の市場で自由に取引を行うこともできない。
それでも中国は、特にこの数年、元の自由度を高める改革を重ねてきた。8月には、突然の発表で市場を混乱させたものの、人民元の為替レートを市場の実勢により委ねる方針に転換した。10月には、ロンドンで人民元建て債券を発行し、預金金利の上限撤廃も決めた。
この間、国境をまたいだ取引や各国の外貨準備に占める人民元の比率は着々と高まっている。
今回のSDR入りを機に、中国の改革がさらに加速し、人民元が真の国際通貨となることを期待したい。それは中国のみならず、長期的に世界にとっても恩恵をもたらすはずだからだ。
人民元が国際金融市場の中に深く組み込まれるようになれば、北京の当局は相場を自在に誘導することが難しくなる。常に市場の評価を意識せざるを得なくなるだろう。一方、国際的に広く保有される通貨になるには、通貨を発行する国が単に経済力で他をしのぐだけでは不十分だ。ルール重視で透明度の高い制度を備えている必要がある。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設などで、金融面においても存在感を増してきた中国だ。警戒を持って眺める向きもあるだろう。
だが、経済規模の拡大に伴い中国の影響力は、他国が好む好まないにかかわらず、増していく。主要通貨国としての経験を積んだ米国、欧州(ユーロ加盟国)、日本、英国は、中国が国際金融の世界で責任ある地位を占めるよう、国内改革の後押しをすることが賢明である。
2015年11月30日 02時34分
SDRへの採用は、国際通貨としての二つの重要な要件を満たしたという、一定のお墨付きでもある。要件とはまず、世界貿易で主要な輸出国であること。そして、自由に取引できる通貨であることだ。
中国はすでに日本や英国をしのぐ輸出大国であり、1番目はクリアしていた。しかし、2番目の取引の自由度については、他の主要通貨に水をあけられていた。5年に1度、構成通貨の点検を行うIMFが前回の2010年に、人民元のSDR入りを見送ったのはこのためだ。
今でも人民元や中国の金融市場には、さまざまな問題が残っている。中国から国外に持ち出せる金額には上限が設定され、海外の投資家が中国の市場で自由に取引を行うこともできない。
それでも中国は、特にこの数年、元の自由度を高める改革を重ねてきた。8月には、突然の発表で市場を混乱させたものの、人民元の為替レートを市場の実勢により委ねる方針に転換した。10月には、ロンドンで人民元建て債券を発行し、預金金利の上限撤廃も決めた。
この間、国境をまたいだ取引や各国の外貨準備に占める人民元の比率は着々と高まっている。
今回のSDR入りを機に、中国の改革がさらに加速し、人民元が真の国際通貨となることを期待したい。それは中国のみならず、長期的に世界にとっても恩恵をもたらすはずだからだ。
人民元が国際金融市場の中に深く組み込まれるようになれば、北京の当局は相場を自在に誘導することが難しくなる。常に市場の評価を意識せざるを得なくなるだろう。一方、国際的に広く保有される通貨になるには、通貨を発行する国が単に経済力で他をしのぐだけでは不十分だ。ルール重視で透明度の高い制度を備えている必要がある。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設などで、金融面においても存在感を増してきた中国だ。警戒を持って眺める向きもあるだろう。
だが、経済規模の拡大に伴い中国の影響力は、他国が好む好まないにかかわらず、増していく。主要通貨国としての経験を積んだ米国、欧州(ユーロ加盟国)、日本、英国は、中国が国際金融の世界で責任ある地位を占めるよう、国内改革の後押しをすることが賢明である。
2015年11月30日 02時34分