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[産経新聞] 【主張】人民元の国際化 信認に値する改革を急げ (2015年12月03日)

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国際通貨基金(IMF)が、通貨危機などに備えた準備資産「特別引き出し権(SDR)」の構成通貨に中国の人民元を加えることを決定し、ドル、ユーロ、円、ポンドと並ぶ「国際通貨」のお墨付きを与えた。

中国経済の膨張を反映した動きである。だが、中国の金融・資本取引の自由化は不十分で、政権の過剰な市場介入も相変わらずだ。これを過小評価した前のめりの判断と言わざるを得ない。

習近平政権が、国際通貨としての信認に値する市場開放を確実に実行すべきは当然だ。自国利益ばかりを優先する姿勢は許されないと厳しく認識してほしい。

同時に、日米欧などの国際社会は中国が当然の責務を果たすかどうかを監視し、これまで以上に強く改革を促さねばならない。

SDRを構成する比率で、人民元はドル、ユーロに続く3番目の大きさとなった。これにより取引がただちに拡大するわけではないが、第3の国際通貨としての地位は国際市場での影響力を高める追い風となろう。

人民元の国際化は中国の悲願である。基軸通貨ドルへの依存を低下させ、人民元の新たな金融秩序の構築を目指す方向性は、経済覇権に欠かせぬ国家戦略だ。

経済力に応じ通貨の存在感が増すのは自然である。それでも人民元がまだ自由に取引できる状態にないことは看過できない。政府はその点を十分に踏まえるようIMFに強く求めたのだろうか。

菅義偉官房長官は今回の判断について「政府としても決定を尊重したい」と語り、世界経済にもたらす直接的影響はないとの認識を示した。だが、ドルやユーロはともかく、日中両国はとくに、アジアを舞台に競合する場面が多いことを忘れてはならない。

ここで人民元の活用が広がれば、円は取引が減るなど、相対的に存在感が低下する恐れがある。実際の企業取引などにどう影響するのかを見極め、これに対応することが肝要である。

1980年代以降の円の国際化は、日本経済の長期停滞で広がりをみせていない。東京金融市場の活性化はもちろん、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などで海外との関係を強化する。円の魅力を高めるには、何よりも、それを担保する経済の底上げが欠かせないのは言うまでもない。

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