Quantcast
Channel: 新聞社説まとめサイト
Viewing all articles
Browse latest Browse all 17272

[産経新聞] 【主張】東芝に課徴金 信頼の回復はこれからだ (2015年12月09日)

$
0
0
東芝の利益水増し問題で、証券取引等監視委員会が過去最高となる約74億円の課徴金を科すよう金融庁に勧告した。

同社は目先の利益確保を優先して損失の先送りを繰り返し、利益の水増しは7年で総額2200億円余りに達していたことが分かっている。

不正な会計操作に基づいた虚偽の情報開示について、監視委が厳しい処分を求めたのは当然である。室町正志社長も受け入れる考えを表明した。

だが処分は、深刻な事態の収拾を意味しない。

市場を裏切った東芝の信頼回復に向けた取り組みは、これから始まる。実効性のある企業統治を確立するため、何よりも不正を許した企業体質の抜本的な改革を急がなくてはならない。

監視委は同社の不正会計について、「歴代の社長が利益至上主義のもとで予算の達成を強く要求したのが原因だ」と断じた。経営陣から実現できない高い目標を提示された部下たちは、会計処理を偽って利益をかさ上げした。

この問題で引責辞任した歴代3社長らに対して会社側は損害賠償請求に踏み切り、課徴金を受けて請求額の拡大も検討する。

企業経営の経験が豊富な社外取締役を招くなど、経営の透明性を高めるという。

これだけでは、不信感は拭えない。子会社の米原子力事業会社の損失についても開示せず、東京証券取引所の指摘を受けてようやく公表した。新経営陣が発足した直後なのに、情報開示に対する意識が徹底も改善もされていなかったことになる。

こうした甘い認識では、失墜した市場の信頼を取り戻すことはできない。不正会計問題による株価下落で損害を受けたとする株主の集団提訴も起きている。過去とは決別する姿勢を内外に明確に示す方策が問われている。

行政処分を勧告した監視委は今後、歴代経営陣の刑事告発が可能かどうかの本格検討に入る。日本を代表する大手企業が本当の意味で出直すためにも、徹底した調査は欠かせない。

東芝の監査を担当する新日本監査法人は、長年にわたる不正を見抜けなかった。同法人は、オリンパスの損失隠し事件でも、平成24年に業務改善命令を受けたばかりである。監査の信用を失墜させた責任は極めて重い。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 17272

Trending Articles