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[東京新聞] 補正予算案 選挙目当てでは困る (2015年12月19日)

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政府が閣議決定した二〇一五年度補正予算案は、自民党内でさえ異論が噴出した低年金受給者への三万円給付など問題だらけだ。党内から出た「バラマキ」批判は多くの国民も同じ思いだろう。

補正予算案は、農家の補助金拡充など環太平洋連携協定(TPP)の対策費や、東日本大震災の復興財源の上積みなどを含み、歳出規模は三兆三千二百十三億円になった。

財源は一四年度予算の使い残しなどで賄い、新規の国債発行(借金)に頼ってはいない。だからといって非効率な使途や効果の見込めない予算が許されていいはずはない。

問題となったのは、低所得の年金受給者の約千百万人に一律三万円の給付金を配ることだ。安倍晋三首相が掲げる「一億総活躍社会の実現」の緊急対策に盛り込まれ、首相の「アベノミクスの賃上げの恩恵が行き届きにくい世帯の支援を」との指示で決まった。

だが、ちょっと待ってほしい。そのアベノミクスの恩恵を受けた人がどれだけいるというのか。働く人の七割を占める中小企業の従業員は恩恵を受けたのか。年金すら受け取っていない無業の人や低賃金の非正規労働者は、なぜ給付の対象にならないのか。

自民党内からも「高齢者を優遇しすぎではないか」「選挙目当てのバラマキだ」との批判が続出した。来夏の参院選前後のタイミングに投票率が相対的に高い高齢者だけに三万円もの現金を配れば、選挙対策と受け取るのが普通ではないか。それを堂々と指示するのだから、感覚がまひしているか驕(おご)りがあるかであろう。

一方で、来年度から子供一人当たり三千円の子育て給付金を打ち切ることが決まった。消費税増税の負担軽減策として昨年度から始まったが、軽減税率の財源確保の一環として廃止する。

「一億総活躍社会」といいながら子育て支援は打ち切り、高齢者支援には三千億円強もの現金を配るというのでは看板倒れも甚だしい。ただの選挙至上主義だといわれても仕方あるまい。

補正予算案には、待機児童や介護離職対策として施設整備費が計上されたが、これらは緊急事業でなく長期にわたり予算を組むべきものだろう。社会保障費の組み替えも含め当初予算でしっかりと位置付けるのが筋だ。

予算が余ったら使ってしまうといった財政規律の欠如が、この政権が抱える最大の問題である。

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