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[産経新聞] 【主張】敬老の日 長寿祝う気持ち忘れずに (2015年09月21日)

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6年ぶりに5連休の「シルバーウイーク」となり、きょうの「敬老の日」が連休気分の中でかすんでしまいそうだが、「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」との祝日の意義をいま一度、思い起こしたい。

敬老の日が祝日に定められたのは昭和41年と歴史は浅いものの、わが国では老人を敬う精神は古くから連綿と受け継がれてきた。貧しい男の親孝行にまつわる奇譚(きたん)を聞いた元正天皇が元号を「養老」と改めた「養老の滝」伝説が、鎌倉時代の説話集『十訓抄』などにみえるのも、敬老精神がいかに大切にされてきたかを物語っていよう。

だが昨今は高齢者の増加を冷淡に見る風潮が強まっているように思われ、お年寄りへの虐待も増える傾向にある。厚生労働省の調べだと平成25年度は家族や親族からの虐待が1万5731件に上り、介護施設で確認された職員による虐待も221件あった。

先日も川崎市の有料老人ホームで職員が入所者を虐待する様子が映像に示され、世間にショックを与えた。これでは老人が生きがいをもち、安心して暮らせる社会とはとてもいえない。

かつて皇后陛下は「高齢化が常に『問題』としてのみ取り扱われることは少し残念に思います」「90歳、100歳と生きていらした方々を皆して寿(ことほ)ぐ気持ちも失いたくないと思います」と述べられた。慈愛に満ちたお言葉に胸を熱くした人も多かった。

終戦から70年がたち、あの日の玉音放送を記憶している人の大半は既に75歳を超えている。焦土と化した日本を復興させ、経済成長を牽引(けんいん)してきた主役はほかでもない、いま後期高齢者と呼ばれている人たちではなかろうか。

社会保障費の膨張など高齢社会が抱える課題はさまざまあるにせよ、政治家はもとより国民全体が何より長寿を祝う気持ちをもたなければ、どんな施策も血の通ったものとはなるまい。

昨年、「60歳代を高齢者と言わない都市」を宣言した神奈川県大和市は、豊かな知識と深い経験を持つ人材は貴重な宝だとうたっている。まったく同感だ。

60歳代に限らず、長く社会に貢献し、その後の世代を生み、育ててきた全てのお年寄りが宝として輝けるような「敬老社会」にしていかねばならない。

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