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[日経新聞] 注文受け止め万全の再稼働を (2015年12月26日)

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原子力発電所に絶対の安全はないとしたうえで、リスクを最小限に抑えるよう求めたことは、現実的な判断といえる。関西電力の高浜原発3、4号機(福井県高浜町)をめぐり、福井地裁は再稼働を認める判断を下した。

住民らによる仮処分申請を受け、同地裁は4月、「想定を超える地震で大事故に至る危険性がある」として差し止めを命じた。関電が異議を申し立て、地裁は別の裁判長のもとで改めて審理し「地震に対し余裕のある安全性を確保している」と判断を覆した。

同原発は原子力規制委員会の安全審査に合格している。争点になった安全審査の妥当性についても「専門性や独立性が確保された規制委が十分に審査しており、不合理な点はない」とした。過去の原発訴訟で最高裁が出した判例を踏まえたものだ。

福井地裁の前回の裁判長は、原発の耐震基準づくりに携わった専門家の発言を引用し、「地震の想定が甘く、絶対安全とはいえない」と断じた。だが当の専門家が「事実誤認」と反論するなど、緻密さに欠けた点は否めない。

一方で、国や電力会社が重く受け止めるべき点も多い。地裁は「規制基準は安全神話に陥らないよう最新の知見を反映し、高い水準の安全性をめざす努力が求められる」と注文をつけた。

東京電力福島第1原発の事故後、住民の原発への不安はなお強い。原発の安全性は規制委だけでなく、司法も判断してしかるべきだ。今回、地裁も指摘したように、安全審査のあり方に根本的な問題があれば、司法も踏み込んで判断すべきだろう。

高浜原発の再稼働をめぐっては地元の高浜町のほか、西川一誠知事も同意を表明した。関電は来年1月にも再稼働をめざしている。

一方で、同原発から30キロ圏には京都府や滋賀県の一部が含まれ、事故が起きたときの住民避難などになお課題が残る。国や関電は防災計画づくりなどを支援し、再稼働に万全を期すべきだ。

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