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[東京新聞] 動きだす春闘 デフレ脱却へ粘り腰で (2016年01月20日)

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経団連が十九日、指針を示したことで今年の春闘が動きだす。原油安、中国などの景気鈍化で株価が急落し、波乱の年明けとなった日本経済だが、デフレ脱却には継続的で確実な賃上げが不可欠だ。

二年連続のベースアップ(ベア)が実現した昨年の春闘。消費税増税の影響も一巡し「このベアなら消費を増やしてもいいと家計が動くかもしれない」と期待された。しかし円安による物価上昇に賃金が追いつかず、景気の好循環は生まれていない。

「二年で2%の物価上昇」「一気にデフレの引力圏から脱出する」という政府・日銀が目指した短期決戦型のデフレ脱却は狙い通りには進まず、安倍政権の経済政策は息切れ気味だ。そこへ原油価格の急落や米国の金融政策転換による新興国、資源国への影響、巨大市場の中国の成長鈍化で不透明感が広がっている。

ただ、三月にヤマ場を迎える春闘交渉の前提になるのは二〇一五年度の企業収益。こちらは過去最高の水準を維持している。

十九日、春闘指針で記者会見した経団連の工藤泰三副会長(日本郵船会長)は「デフレ脱却は社会的な要請」と強調。業績は企業によってまだら模様になりつつあるが、今春闘については「ベアも含め、年収ベースで前年を上回る賃上げが実現するように」と前向きに応じる考えを表明した。

「こんなに腰が引けていては」(早川英男元日銀理事)と心配する声が聞かれるのは、むしろ労働側かもしれない。

連合のベア要求は前年の「2%以上」から「2%程度」に軟化。春闘相場を主導する全トヨタ労連は昨年「六千円以上」だった要求を「三千円以上」と半分に引き下げている。

ただ、連合の神津里季生(こうづりきお)会長は「底上げ、底支えと格差是正をともに実現したい」と闘争方針を説明。大企業の賃上げ水準を抑えて下請けの中小企業にベアを広げ、「格差是正」を進める狙いを強調している。

「物価は上がらない」というデフレマインドは、企業や個人を内部留保や貯蓄に向かわせ、新たな挑戦への意欲、経済の活力を削(そ)ぐ。格差を是正し、社会保障を充実させ、若者にチャンスを広げる世の中にするには、将来を見通せる安定的な成長と賃上げが必要だ。

デフレ脱却という目標をしっかり見据えた粘り腰の交渉と議論を労使に期待したい。

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