日本の象牙市場に大きな抜け穴はないか。ワシントン条約では輸出入は原則ご法度のはずだが、国内に出回る象牙はうなぎ上りの様相をみせている。規制の網が破れているなら、大急ぎで繕わねば。
日本国内で象牙の不正取引が広がっている。希少動植物を守るワシントン条約の会合があったスイス・ジュネーブで先週、国際環境NGOの環境調査エージェンシーがそんな問題を訴えた。
絶滅のおそれがあるアフリカゾウの密猟の根絶は、世界共通の喫緊の課題である。なのに、日本のずさんな取引規制が努力に水を差しているという。政府の監視の目に濁りはないか。
条約では一九九〇年から、象牙をふくめてアフリカゾウの輸出入は原則禁止されている。国内で取引されるのは、おおむねそれ以前に輸入された象牙に限られる。
政府は取引に先立ち、全形を保った象牙の登録や製品の取扱業者の届け出を義務づけている。市場の透明性を高め、密輸されたような違法象牙を排除する狙いだ。
だが、この規制の仕組みは形骸化して不正取引を助長してさえいると、環境調査エージェンシーは批判する。国内取引を全面的に禁止するべきだとの主張である。
取引の出発点となる登録手続きで、不正の横行を疑わせる実態が覆面調査から判明したという。環境省から登録業務を唯一委託されている一般財団法人の自然環境研究センターが舞台だった。
輸入禁止後に持ち込まれた象牙でも、禁止前に入手したとして申請するよう助言したり、取得の適法性を証明する公的文書の代わりに、家族や知人の証言書類でも認めたりしている。そんな疑いだ。
環境省は厳正に対応するよう指導したが、それで十分か。合法的な取得を裏づける証拠の提出を義務づけていない制度の欠陥が、闇取引を招いているとの声もある。
虚偽登録を指南したり、無登録のまま売買したりする業者も多く存在する。無届けのネット取引や中国への密輸といった事例も調査で浮かんだという。
象牙登録の推移をみると、二〇一〇年までの十年間は、輸入が一時解禁された〇九年を除き年六十〜五百本程度。それが一一年には千百本を超え、一四年には二千本に迫った。消費者意識も問われる。
密猟の背景には、アフリカ諸国の貧困や政治腐敗がある。テロ組織の資金源にもなりうる。自然環境を守り、経済基盤を強くする闘いに、日本はもっと貢献したい。
日本国内で象牙の不正取引が広がっている。希少動植物を守るワシントン条約の会合があったスイス・ジュネーブで先週、国際環境NGOの環境調査エージェンシーがそんな問題を訴えた。
絶滅のおそれがあるアフリカゾウの密猟の根絶は、世界共通の喫緊の課題である。なのに、日本のずさんな取引規制が努力に水を差しているという。政府の監視の目に濁りはないか。
条約では一九九〇年から、象牙をふくめてアフリカゾウの輸出入は原則禁止されている。国内で取引されるのは、おおむねそれ以前に輸入された象牙に限られる。
政府は取引に先立ち、全形を保った象牙の登録や製品の取扱業者の届け出を義務づけている。市場の透明性を高め、密輸されたような違法象牙を排除する狙いだ。
だが、この規制の仕組みは形骸化して不正取引を助長してさえいると、環境調査エージェンシーは批判する。国内取引を全面的に禁止するべきだとの主張である。
取引の出発点となる登録手続きで、不正の横行を疑わせる実態が覆面調査から判明したという。環境省から登録業務を唯一委託されている一般財団法人の自然環境研究センターが舞台だった。
輸入禁止後に持ち込まれた象牙でも、禁止前に入手したとして申請するよう助言したり、取得の適法性を証明する公的文書の代わりに、家族や知人の証言書類でも認めたりしている。そんな疑いだ。
環境省は厳正に対応するよう指導したが、それで十分か。合法的な取得を裏づける証拠の提出を義務づけていない制度の欠陥が、闇取引を招いているとの声もある。
虚偽登録を指南したり、無登録のまま売買したりする業者も多く存在する。無届けのネット取引や中国への密輸といった事例も調査で浮かんだという。
象牙登録の推移をみると、二〇一〇年までの十年間は、輸入が一時解禁された〇九年を除き年六十〜五百本程度。それが一一年には千百本を超え、一四年には二千本に迫った。消費者意識も問われる。
密猟の背景には、アフリカ諸国の貧困や政治腐敗がある。テロ組織の資金源にもなりうる。自然環境を守り、経済基盤を強くする闘いに、日本はもっと貢献したい。