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[毎日新聞] 中央省庁の移転 理念と全体像を明確に (2016年01月21日)

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国の機関の地方移転をめぐる政府内の調整が具体化してきた。省庁組織の移転に関しては、文化庁と消費者庁を軸に検討が進んでいる。

官庁の抵抗が強い省庁の移転を進めるには東京集中是正という目標を政府が明確に示し、どの機関がふさわしいかを幅広く吟味していく手順が欠かせない。2機関に対象が事実上絞られた過程には疑問がある。納得できる全体像を描くべきだ。

安倍内閣は地方創生の一環として中央省庁や独立行政法人、研究機関などの地方移転に取り組んでいる。政府が提唱している民間企業の本社機能の移転に先駆ける狙いもある。地方側から募った要望に基づき選定する方式で、3月に結論を出す。

研究・研修機関に関しては、理化学研究所(福井県などが要望)など22機関について、一部機能移転を中心に調整している。地域の産学官連携などと結びつける形で実効性ある移転を進めてほしい。

省庁移転は中央官庁や関係団体の反対が強く調整が難航している。地方から要望のあった7機関のうち文部科学省の外局である文化庁の京都府への移転、内閣府の外局である消費者庁の徳島県への移転がここにきて浮上している。

国宝が集積した関西にあり、長く日本文化の中心だった京都への文化庁移転は現場近くで文化財行政を進めるうえでプラス面があり、関西の発信力強化にも寄与する。移転になじみやすいと言えよう。

これに対し、消費者庁や国民生活センターの移転は消費者事故への対応や関係省庁との調整などに支障を来さないか、疑問がある。

2009年に発足した消費者庁は職員の多くが各府省や自治体などの出向組で占められ、国民生活センターの体制も決して強固ではない。河野太郎消費者担当相は移転に積極的で、試験的な移転も実施したうえで判断するという。消費者団体などの声に十分耳を傾けるべきだろう。

省庁移転をめぐっては大阪府などから要望のある特許庁、和歌山県から要望のある総務省統計局の移転などに所管閣僚が反対、慎重姿勢を表明するなど2機関以外は現時点で動く気配がない。

文化庁も一部機能の移転にとどめる動きもある。これでは中央官庁の中で立場が弱い消費者庁が狙い撃ちされ、帳尻合わせに使われる印象すら与えかねない。

今回の政府の取り組みは地方の要望を前提とした結果、国が一極集中是正に取り組む理念と責任があまり強調されていない傾向がある。

だが、どの機関を移すかは本来、所管閣僚の意向とは切り離した内閣全体の意思で決めるべきだ。対象を改めて吟味してほしい。

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