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[日経新聞] 被災地の自立へきめ細かな支援続けよ (2016年01月21日)

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政府は東日本大震災の被災地の復興に関する2016年度から5年間の基本方針の骨子をまとめた。3月までに閣議決定する。震災からまもなく5年。被災地の自立に向けた環境を整えられるかが最大のカギになる。

基本方針では地震や津波で被災した岩手、宮城について、今後5年間を復興の「総仕上げ」の期間と位置付けた。災害公営住宅の建設や高台での宅地造成が進み、あと1年程度で住宅再建のめどが立つ見通しのためだ。

とはいえ、被災者からみればようやく生活を立て直す出発点にたどりついたにすぎない。新たに暮らす場所でのコミュニティーづくりや生活関連サービスの確保など課題は山積している。

もともと、高齢化が進んでいる地域だ。専門家による相談や見守りなど、心のケアも欠かせない。

産業再生も道半ばだ。内陸部を中心に企業立地が増え、漁港の復旧や水産加工施設の再建は進んだ。農地の規模拡大にも取り組んでいる。一方で、震災以前の売り上げを回復した地場企業はまだ少ない。水産加工業者などは今も人手不足に苦しんでいる。

観光面はさらに厳しい。日本全体では訪日客が急増しているが、福島も含めた被災3県は蚊帳の外だ。宿泊者数をみても震災以前の水準にすら戻っていない。

被災地が自立するためには風評被害を払拭する必要がある。政府は復興の現状を内外に正しく発信することに注力すべきだ。

福島については政府が復興期間と位置づける20年度までの10年間が終わって以降も、国が前面に立つと基本方針に明記した。原子力発電所の事故すら収束していない以上、当然だ。

政府は帰還困難区域を除いた地域について17年3月までに避難指示を解除する目標を掲げている。役場や住民が帰還してこそ、福島は新たな段階に入る。

そのためには除染を加速すると同時に、福祉や医療、商業など生活できる環境を整えなければいけない。放射線量のきめ細かな把握や健康管理も欠かせない。

福島再生に向けて打ち出したロボットや廃炉研究の拠点づくりなども着実に進めてほしい。

政府は16年度から5年間の事業費を6.5兆円と見込む。被災地ごとに復興の度合いは異なるだけに、自治体や住民の声を生かしたきめ細かな支援を続けるべきだ。

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