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[産経新聞] 【主張】3万円給付金 年金抜本改革こそ本筋だ (2016年01月21日)

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いくら国会審議を聞いても、政府から納得のいく説明はなかった。

20日成立した平成27年度補正予算に盛り込まれた、低所得高齢者らへの3万円の「臨時福祉給付金」のことである。

景気刺激策なのか、福祉目的なのか、その意図は最後まではっきりしなかった。やはり、当初からの印象通り、「参院選対策のばらまき」とみるほかない。

この調子では、安倍晋三政権の経済運営全体に対する期待もしぼみかねない。政権は税収の上振れ分の使途を検討するというが、大盤振る舞いに傾斜する懸念はないのか。

大切なのは、国民の歓心を買うための政策を連ねることではなく、腰を据えて改革に取り組む姿勢を貫くことである。

給付金の対象は、住民税が非課税の高齢者約1100万人だ。その位置付けは、消費税率10%への再増税時に低年金者に上乗せする給付金の前倒し実施である。

だが、これはおかしい。消費税10%時の上乗せ給付金は無年金者には支給されず、3万円給付とは対象が一致しない。制度が異なるのに「前倒し」というのは、明らかに無理がある。

政府は同時に、1億総活躍社会の実現に向けてアベノミクスによる賃上げの恩恵が届かない層を支援するため、と説明した。加藤勝信1億総活躍担当相は「消費を喚起し強い経済を実現したい」とも語っていた。ならば、なぜ高齢者に絞る必要があったのか。

3万円給付は、65歳未満の障害基礎年金と遺族基礎年金の受給者も対象だが、こちらは補正ではなく来年度予算案へと後回しにした。高齢者向けを先行させ、参院選前の6月までに給付するというのでは、高齢者の票を意識したためととられてもやむを得ない。

3万円給付が高齢者優遇にすぎるという批判は与党の一部にもあった。消費税8%の激変緩和策である子育て世帯臨時特例給付金の廃止を決めたためである。

そもそも、低所得高齢者に一律に現金を支給する手法は、自民党が批判する民主党の「最低保障年金」と大差ない。しかも3万円給付は1回限りである。一時金ではなく、年金制度を抜本改革するのが本筋だ。裕福な高齢者の年金の一部を低年金者に回す案など選択肢はいくつもある。その議論から逃げてはならない。

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