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[毎日新聞] 施政方針演説 首相こそ建設的議論を (2016年01月23日)

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安倍晋三首相による施政方針演説が行われた。首相は「挑戦」をキーワードに経済成長や1億総活躍社会の実現などに取り組む姿勢を強調し、野党に対案の提示を求めた。

国会の論戦を充実させていくためには首相が政権3年の実績と課題をより率直に説明する必要がある。野党も含めたさまざまな意見に耳を傾ける姿勢も大切だ。「建設的な議論」の構築に首相こそ努めてほしい。

国会で首相による演説が行われたのはおよそ1年ぶりだ。首相は年頭の記者会見と同様、「挑戦」との表現を繰り返し、「イノべーション型経済成長」の実現を掲げた。

一方で同一労働同一賃金の実現など労働制度改革や、生活支援などにも比重を置いた。参院選を控え格差是正など「分配」に力点を置く狙いの表れだろう。

ただ、「挑戦」の連発に違和感もある。今の安倍内閣に一番必要なのは、第2次内閣発足から3年を経た経済の現状認識と、これを踏まえた課題のていねいな説明のはずだ。

市況は年明けから大幅な株安、円高が進み、金融緩和などで進めたアベノミクスが逆回転するかのような様相だ。経済が暗転すれば、首相が描く「成長と分配の好循環」のシナリオも根底から崩れてしまう。

首相は「世界経済の不透明感が増している」と指摘し、年頭所感で使った「もはやデフレではない」との表現は今回、演説で用いなかった。中国経済などの要因があるとはいえ、これまでの政策の真価が問われている。現状をどう捉えているか、より踏み込んで語ってほしかった。

憲法改正に関しては、選挙制度改革と並べる形で議論を呼びかけた。首相は参院で改正の発議ができる多数派を形成することを参院選の目標として掲げている。施政方針演説は予算案の説明が主眼という制約がある。それでも、憲法改正でいったい何を目指すのかを首相自らが語るべきだったのではないか。

野党に対する姿勢も気になる。演説の冒頭から野党を念頭に「対案を示さず、『どうにかなる』という態度は無責任だ」と批判し、末尾でも「ただ『反対』と唱える。それでは責任は果たせない」と挑発した。

民主党などが対案提示に努めるべきなのは確かだ。だが、自民党1強状態の下、首相が最初から批判に対しけんか腰で、聞く耳を持たないようでは議論は成立しない。

今国会では消費増税に伴う軽減税率の財源対策をめぐる野党の質問に首相が「最初から理解したくないなら仕方がない」と反発する場面もあった。答弁には荒っぽさや、はぐらかしが目立つ。政策の総点検に謙虚にのぞむべきだ。

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