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[日経新聞] 世界市場の不安を映すマイナス長期金利 (2016年02月10日)

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9日の債券市場で日本の長期金利が初めてマイナスとなった。返済期間の長いお金の借り手が、利息をもらう異例の事態だ。

日銀がマイナス金利政策を決めたことで金利が下がりやすくなっていた。さらに欧米で信用不安が再燃し、安全資産とされる国債が大量に買われ、長期金利がマイナス圏に沈んだ。

今は市場の不安心理が先行している。政府・日銀は市場の動きに警戒を怠らず、金融システム全体に目配りしてほしい。

欧米でも金利低下が進んでいる。世界経済の先行き警戒感から、世界規模でリスクを回避する動きが急速に進んだ。マイナス金利はその象徴といえる。

東京市場では、比較的リスクが小さいとされる円が買われ、日経平均株価は大きく下落した。

日銀が1月にマイナス金利政策を決めたのは、金融機関が日銀に預ける預金の一部をマイナスにすることで、期間の長い分を含めた金利全体を抑える狙いからだ。

しかし、それだけで長期金利がマイナスになった理由は説明できない。世界経済が急減速しかねないとの市場の懸念が背景にある。

中国経済は減速し、その余波で原油などの資源価格が下落している。米国の利上げも背景に、資源国から資金流出が進んでいる。こうしたグローバルな資金の急速な巻き戻しが、長期金利のマイナスの一因だ。

日本発の信用不安ではないものの、マイナス金利の影響は国内にも広がっている。

資産運用会社は国債などで運用する一部の金融商品の新規募集を停止した。一部国債の募集も中止された。金融機関による預金金利の引き下げも相次いだ。

貸出金利と預金金利の差である利ざやが縮むと金融機関の収益が圧迫され、貸し渋りなどを招くおそれはある。政府・日銀は金融機関の経営状況をきめ細かくチェックし、金融システムの維持に万全を期すべきだ。

同時に、今月末に中国で開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を念頭に、世界経済の成長持続と市場安定に向けた協調を探るときだ。

ナイジェリアが世界銀行に支援を求めるなど、資源国の一部は資金繰りに苦しんでいる。新興国発の世界経済危機につながる事態を防ぐためにも、各国・地域が緊密に連携する必要がある。

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