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[東京新聞] 香港の失踪事件 「一国二制」揺るがす闇 (2016年02月10日)

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中国共産党に批判的な書籍を扱っていた香港の書店関係者の失踪で、香港では中国当局の関与を疑う声が強まっている。事実であれば「一国二制度」を揺るがす言論・出版への危険な圧力である。

香港の「銅鑼湾書店」の親会社株主である桂敏海氏や書店責任者の李波氏ら五人が昨年十月から十二月にかけ、香港のほか滞在先の広東省やタイなどで失踪した。

事件の真相は闇に包まれた部分が多いが、中国当局は五人が本土で刑事勾留されたと認めている。香港の民主派からは「中国当局による政治的な拉致だ」と批判する声が上がっている。

同書店は中国本土では発行できない中国共産党を批判する「発禁本」の発行を手がけており、単なる失踪事件ではないとの見方にはうなずける点が多い。

中国国営メディアは桂氏について「交通事故の罪を償うために出頭した」と報じた。香港紙によると、李氏は「自ら本土に渡り捜査に協力している」との内容の手紙を香港警察に送ったという。

しかし、香港人が中国本土に行く際に必要な「通行証」は李氏の自宅においたままであるという。自分で本土に行ったという説明には大きな疑問が残る。

中国当局が香港に越境して李氏を拘束・連行したのなら、香港の高度な自治を認めた「一国二制度」を踏みにじることになろう。

失踪事件が明るみに出て以降、香港では「一国二制度を守れ」と訴える大規模なデモが起こった。事件を中国当局による言論・出版への圧力と見る香港人の危機意識は十分に理解できる。

中国甘粛省では一月、地元紙記者三人が拘束され、一人が恐喝容疑で逮捕された。逮捕された記者は地元政府の不正を追及しており、新聞社は「記者が報道をめぐり当局から脅されていた」との文書をネット上に公開した。

地元政府の暗部に切り込む報道に対する権力側の報復であるなら、断じて許されることではない。

中国では人権派弁護士への有罪判決も相次ぐ。民主主義を守ろうとする言論や活動への圧力には国際社会も強い懸念を示している。

香港では一昨年、行政長官選の民主化を求める「雨傘運動」が起こった。香港の高度な自治を揺さぶる事件であるのに、香港政府の対応は及び腰にも映る。「民主香港」の輝きを失わせないためにも、香港政府は中国当局に断固とした真相究明を求めてほしい。

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