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[産経新聞] 【主張】重力波の観測 「新しい物理」が楽しみだ (2016年02月13日)

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アインシュタインが100年前に存在を予言した重力波を初めて観測したと、米国の研究チームが発表した。

天文学や物理学に新たな扉を開き、人類の知に大きな飛躍をもたらす歴史的な快挙だ。最大限の称賛を贈りたい。

アインシュタインの一般相対性理論では、質量を持つ物体は「時空のゆがみ」を生む。物体が運動すると、このゆがみがさざ波のように全宇宙に伝わる。これが重力波である。

観測できる重力波は、地球と太陽の距離(約1億5千万キロ)に対し、水素原子1個分ほどのゆがみだという。研究チームは「直接観測は不可能」とも言われた、わずかなゆがみを捉えた。

村山斉・東大カブリ数物連携宇宙研究機構長は「技術的にもとんでもない離れわざ」と絶賛する。高度な技術で、現代物理学の大きな柱である相対性理論の正しさが、改めて裏付けられた。

物理学の世界では、20世紀に確立した相対性理論と量子力学を土台に、宇宙や物質の成り立ちについての理解を飛躍させる「新しい物理学」の幕開けが期待されている。その意味でも、重力波観測がもたらす意義は大きい。

光や電磁波が届かないブラックホールの構造や誕生直後の宇宙の姿は、重力波によって観測の扉が開かれる。原始宇宙で空間が急膨張したとされる「インフレーション理論」も、重力波観測で立証される可能性がある。

大きな重力を持ち銀河や星の形成に深く関わっているとされる「暗黒物質」、宇宙を加速膨張させる「暗黒エネルギー」はいずれも正体不明だが、重力波が解明の糸口になるかもしれない。

日本では、東大宇宙線研究所の重力波望遠鏡「かぐら」(岐阜県飛騨市)が昨秋に完成した。本格観測はこれからだ。米国より一歩遅れる形にはなるが、重要性はさらに高まったともいえる。

米国、日本、欧州が競い合いながらデータを照らし合わせることで、「重力波天文学」が飛躍的に進展することを期待したい。

宇宙誕生直後のエネルギー状態を再現する大型加速器実験の成果と合わせれば、原始宇宙の物理現象や未知の素粒子を多角的に捉えることもできるだろう。

その成果はすぐに役立つわけではないが、人類にとってかけがえのない知の財産になる。

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