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[読売新聞] シリア情勢 露主導の停戦に不安が残る (2016年03月01日)

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シリア内戦を巡り、米国とロシアが共に呼びかけた停戦が発効した。アサド政権と反体制派の戦闘は概(おおむ)ね沈静化したが、このまま維持できるかどうかは予断を許さない。

5年に及ぶ内戦で大規模な戦闘が一時停止したのは、初めてである。国連は、2月上旬から中断している和平協議を7日に再開する方針を発表した。停戦を保ち、協議進展につなげねばならない。

アサド政権と反体制派が攻撃を中止し、国連などによる住民向けの食糧や水を受け入れることが停戦の主な枠組みだ。和平協議に応じ、移行政権樹立から選挙実施、新政権発足までの行程表の履行を話し合うことも含まれる。

過激派組織「イスラム国」や、アル・カーイダ系の「ヌスラ戦線」などのテロ組織には、停戦は適用されない。米国主導の有志連合やロシアは、こうした勢力への軍事作戦を継続できる。

「イスラム国」は、戦闘やテロを続け、停戦を妨害する構えを示している。関係国の断固とした対処が求められよう。

懸念されるのは、アサド政権と、政権を支援するロシアがテロ組織掃討の名目で反体制派を攻撃し、停戦が破られる事態だ。停戦前の反体制派拠点アレッポへの空爆も、「ヌスラ戦線兵士が周辺にいる」ことが理由になっていた。

ヌスラ戦線と反体制派の活動範囲は、重なる場合が多い。ロシアは、反体制派を攻撃していないという十分な説明ができるのか。

停戦監視は、米露などの作業チームが、シリアの露軍駐屯地や隣国ヨルダンなどで、情報収集を進めるにとどまっている。国連などが現地で停戦違反を確認し、対応する体制でなければ、実効性は期待できない。

オバマ米大統領は停戦について、「いかなる幻想も抱いていない」と述べ、ロシアへの不信を露(あら)わにした。ウクライナ紛争での前例があるからだろう。ロシアは停戦を呼びかける一方で、親露派武装集団への支援を続けた。

今回の停戦を主導したのはロシアだ。プーチン大統領は「流血と暴力に終止符を打つ真の機会がようやく訪れた」と語った。アサド政権の温存や、中東で米国に対抗する影響力の確保に、メドがついたという判断からではないか。

米露の覇権争いは、事態収拾を困難にするだけである。内戦が終結しなければ、「イスラム国」の弱体化や難民流出の抑制への道が開かれないことを、国際社会は忘れてはなるまい。

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