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[産経新聞] 【主張】大震災5年 津波避難の実践と継承を (2016年03月09日)

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東日本大震災による1万8千人を超える死者、行方不明者のほとんどは津波の犠牲となった。

重くつらい事実を改めて直視しなければならない。悲劇を繰り返さないことが、残された者たちの責務だ。

大津波から命を守る手段は「避難」しかない。大震災の最も重い教訓を心に刻まなければならない。

昨年2月の三陸沖地震では、岩手県沿岸に津波注意報が発令されたが、自治体の指示や勧告に従わず、避難を見合わせた住民が多かった。

三陸沿岸は、繰り返し大津波の被害に遭い、120年前の明治三陸津波では2万2千人もの犠牲者を出した。津波が来たら各自が高台に逃げるという「津波てんでんこ」の教えも伝わる。

大震災での岩手県の犠牲者は5800人にのぼる。津波の脅威や教訓を頭で理解していても、それだけで実際の避難行動に結びつくとは限らない。

教訓を行動につなげるために、何ができるかを考えたい。

津波の恐れがあるときは、予想される波高が低くても、まず「逃げる」ことを大原則としたい。大震災では、地震発生直後の予想津波高が実際より低い数値だったために、「堤防があるから大丈夫」と判断して犠牲になったケースが指摘された。

たとえば、津波注意報が発令されたときは、住民が自主的に避難し、地域ごとに安否を確認する。被害の恐れがなければ臨時避難訓練と位置づけ、解散前に参加者全員が「次も必ず避難しよう」と確かめることを提案したい。

大震災の2日前、三陸沖で地震があり、東北地方の太平洋岸に津波注意報が出された。このとき、住民が自主避難し、次も逃げることを確認していたら、震災犠牲者は大幅に減少しただろう。

大震災後、大規模なかさ上げ工事や、高くて強い防潮堤の建設を進めている地域もある。

だが、ハード面の対策を過信し、津波に対する警戒心を解くのは危険だ。

高台にいても、より安全な場所へ逃げる。堤防には頼らない。大震災でも、それが当てはまる事例があった。

津波防災は風化との戦いだ。一人一人が避難行動を積み重ねていくことが、次の世代の命を守ることにもつながる。

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