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[読売新聞] 3・11追悼式 未曽有の経験を風化させまい (2016年03月12日)

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過酷な被災の経験を決して風化させない。その誓いを新たにしたい。

政府主催の東日本大震災5周年追悼式が開かれた。天皇、皇后両陛下をはじめ、安倍首相や遺族代表ら参列者が犠牲者の冥福を祈った。

首相は式辞で、「常に最新の英知を取り入れながら、防災対策を不断に見直していく」と述べ、「災害に強い国づくり」に全力で取り組む考えを強調した。

福島県の遺族代表、佐久間国幸さん(66)は「私たちの経験を、これから先も、子々孫々そして世界中に伝えていく」と語った。

近い将来、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生が想定される。東日本大震災の貴重な教訓を踏まえ、いかに大規模災害に備えるかが問われている。

読売新聞社が震災5年を前に実施した全国世論調査では、被災地の復興に関心を持つ人が90%近くを占めた。一方で、気がかりなのは、1年前に比べて、関心が「弱まっている」と答えた人が41%に上っていることである。

人の記憶や関心が時間の経過とともに薄れていくものなら、それを防ぐ具体的な手立てを的確に講じなければなるまい。

被災者が語り部として自らの体験を語る。被災地を訪ねる復興ツーリズムを企画する。こうした現地での取り組みに対し、政府や自治体の支援を充実させたい。ホームページなどで様々な活動を一元的に紹介するのも一案だろう。

阪神大震災や新潟県中越地震のほか、一昨年に広島で起きた土砂災害の被災地などでも、東北の犠牲者の追悼行事が催された。

全国の被災地を結ぶ「絆」は東日本大震災を機に強まった。他の地方の被災者や遺族に思いを寄せることは、地元で起きた災害の記憶の風化防止にもつながろう。

自然が猛威を振るう災害列島でこの流れを定着させたい。

震災5年を迎えた今、復旧・復興の進め方についても、語り継ぐべき教訓がある。

街の再建では、集団移転や防潮堤の整備などを巡って、住民合意の形成に時間がかかるケースが目立った。所有者が不明で、買収が難航した土地も多い。

同様の事態を避けるには、自治体などと住民が平時から将来の街の在り方について話し合っておくことが有益だろう。土地の登記を徹底しておくことも重要だ。

復興事業が比較的スムーズに進んだ事例や、逆に滞った事例について、きちんと記録し、確実に伝えていくことが大切である。

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