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[産経新聞] 【主張】被災地の産業再生 将来見据えた人材育成を (2016年03月13日)

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東日本大震災で大きな被害を受けた産業の再生は、今も軌道に乗ったとは言い難い。暮らしを支える地元産業の維持・発展に向け、将来を見据えた効果的な支援を急がなければならない。

被災した工場設備や施設などの復旧を支えたのがグループ補助金だ。中小企業などがグループを作り、共同で事業を再開するのを後押しする仕組みである。

昨年11月までに製造業や水産加工、旅館、商店など、600グループ以上の合計約1万社に4700億円を交付した。

政府は従来、地震などで被災した民間企業に対する直接的な資金支援はしないのが原則だった。これを改めて国と県が復旧費の最大75%を支出した。地域の産業に対する緊急対策として、一定の効果を上げたといえよう。

ただ震災から5年を経て、事業者が自立できる復興に向けた課題もはっきりしてきた。

その一つが、売上高の回復の遅れだ。東北沿岸部の主要産業である水産加工では、事業の再開を果たした業者のうち、売り上げが震災前の8割以上戻ったのは全体の40%にすぎないという。

売上高が震災前の半分以下という業者も2割以上もいる。震災で地域の人口流出が加速したことに加え、休業中に顧客離れが進んだことが大きな要因だ。

被災地の人口減少は人手不足も招いている。働き盛りの人材を賃金の高い建設業などにとられ、せっかく復旧した生産設備を稼働させる態勢が確保できない悩みに直面している。後継者を含む人材育成は待ったなしの状況だ。

産業再生の停滞が人口減に拍車をかけ、地域経済を縮小させる悪循環も断ち切れていない。融資の返済猶予が終われば、資金繰りの悪化も懸念される。

難しい課題を解決するには、新たな販路の拡大や、事業構造の転換などを通じて事業者の自立を促すことが肝要だ。

三陸地方などの水産加工業者が地域で統一ブランドを掲げ、海外を含めて市場を広げる動きもみられる。こうした自主的な取り組みに対する支援を拡充すべきだ。

観光も大きな課題だ。訪日客が急増する中、被災地の宿泊客数は震災前の水準にも戻っていない。観光資源の開拓はもちろん、風評の払拭に向けて官民で正しい情報を発信し続ける必要がある。

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