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[読売新聞] 文化庁京都へ 地方創生に役立つ移転なのか (2016年03月24日)

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地方創生にとって、東京の役所の移転が本当に必要なのか。そんな疑問を抱かざるを得ない。

政府が、文化庁を数年以内に京都へ移転させることを柱とする中央省庁の地方移転の基本方針を決定した。

日本文化の国際発信力の向上や文化財を活用した観光の推進を、文化庁移転の理由としている。

京都は、歴史的な建造物や文化遺産が集積し、外国人観光客に人気がある。そこから情報発信する象徴的意味合いを重視したのだろう。誘致活動に取り組んだ京都府や京都市は歓迎している。

安倍首相は、政府関係機関の地方移転について「地域に仕事と人の好循環を作り出し、東京一極集中を是正する」と強調した。

だが、文化庁移転が地域活性化に具体的にどう結びつくのか。移転費に見合う成果が期待できるのか。そもそも国際発信力がなぜ東京より高まるのか。いずれについても説得力のある説明はない。

文化庁の仕事は、文化財保護だけではない。音楽、美術から映画、アニメまで幅広い文化芸術振興、著作権保護、日本語教育、宗教法人の認証など、多岐にわたる。

政府は今後、協議会を設け、移転内容の詳細を詰める。原則、国会対応の担当者らだけを東京に残し、長官以下、約250人の職員の大半が京都に移るとされる。

基本方針は、文化庁の機能強化をうたうが、京都と東京の二元体制になることで、逆に行政効率の低下を招かないか。

協議会には、国会対応に限らず、必要な部署は東京に残すなど、柔軟な検討が求められる。早くも現在1人の次長ポストを増設する案が浮上している。組織の肥大化にも警戒せねばなるまい。

基本方針は、消費者庁が徳島県へ、総務省統計局が和歌山県へそれぞれ移転する案について、8月末までに結論を出すことにした。テレビ会議やインターネットを活用した実証実験などを重ねて、移転の可否を判断するという。

消費者庁の移転には、消費者団体などが反発している。食の安全などに関する緊急事態が発生した場合、東京にある他の関係省庁との迅速かつ適切な調整に支障を来すことを懸念するためだ。

消費者庁は2009年、縦割りを排する消費者行政の司令塔として発足した経緯がある。こうした心配には一理あろう。

中央省庁の移転は、東京を離れた場所でも行政機能を維持できることが大前提となる。慎重に検討を進めねばならない。

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