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[読売新聞] 熊本避難所損壊 被災者の受け入れに全力を (2016年05月09日)

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被災者がまず身を寄せるべき避難所の多くが、十分に機能を果たせていない。深刻な事態だ。

熊本地震では、各地で指定避難所が被災し、使用不能となった。

熊本市では、171か所の指定避難所のうち約30か所で安全性が確保されず、施設の全体または一部が閉鎖された。2度にわたって震度7の揺れに見舞われた熊本県益城町でも、16か所の避難所のうち4か所で使用を見合わせた。

一昨年4月に施行された改正災害対策基本法は、市町村長に避難所の指定を義務付けている。避難先を公的に定めることで混乱を防ぐ狙いがある。肝心の指定避難所が住民の受け皿にならなくては、法の趣旨は生かされまい。

指定避難所には、学校や公民館などが充てられる。倒壊防止のため建物自体の耐震補強に力が注がれてきた。熊本県の公立小中学校の耐震化率は100%近い。

今回の地震で目立つのは、体育館の壁が剥離したり、照明器具が落下したりするケースだ。約30人が避難中に本震が起き、天井から長さ7メートルの金属製部材が十数本も宙づりになった体育館もある。

避難所に指定する以上、備え付けの器具や部材の補強にも万全を期さねばならない。

指定避難所の安全性に対する不安から、車中泊やテント暮らしを続ける住民は少なくない。被災者の居場所の把握が遅れ、救援物資が行き渡らない一因ともなった。重い教訓と言えよう。

介護の必要な高齢者や障害者らを受け入れる「福祉避難所」も、機能不全に陥った。福祉施設やバリアフリー化された公共施設を市町村が予(あらかじ)め指定し、災害時に公費で運営する仕組みだ。

熊本市では、約1700人の受け入れを想定し、176施設を福祉避難所に指定していた。だが、地震で多くの施設が損壊したうえに、職員の被災による人手不足なども重なり、開設は難航した。

5月初めの時点で、実際に対象者を受け入れた施設は3割、人数も想定の2割程度にとどまる。

地域全体が被災すれば、施設の人手不足は避けられない面もある。他の自治体から専門職員を派遣してもらう。被災者を広域的に受け入れてもらう。自治体間のそうした連携が欠かせまい。

東日本大震災では、避難生活により、高齢者の認知症の症状が悪化した例が報告されている。

本人はもとより、避難と介護の両立という困難に直面する家族の支援も急務である。

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