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[東京新聞] 不登校対策法案 賛否の溝埋める努力を (2016年05月09日)

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不登校の子や親たちの賛否が割れたままで、法案を押し通せば禍根を残すだろう。学校外の学びの支えを前進と見るか、不登校を逸脱行動と捉える発想を危険と見るか。子のために、溝を埋めたい。

不登校の小中学生は、すでに二十年近く、年間十万人を超え続けている。子どもには学校に通う義務はないけれど、放置しては、学ぶ権利を守れない。保護者も、子に学ばせる義務を果たせない。

では、どうするか。議員立法での打開策を話し合ってきた超党派の議員連盟が当初まとめたのは、民間のフリースクールや家庭などでの学びを義務教育として公認するという法案だった。

子どもの「個別学習計画」をつくり、教育委員会の認定を受けた保護者は、就学義務を履行したとみなす。計画をこなした子は、義務教育を修了したと認める。

実現すれば、学校一本やりの義務教育は多様化し、不登校現象は解消する可能性があった。

しかし、「不登校を助長しかねない」とか「個別学習計画に縛られ、フリースクールや家庭の自由が失われる」といった異論が相次いだ。法案は見直しを迫られた。

結果、議連が今国会での成立をめざす法案は、かねて文部科学省が取り組んできた学校復帰の方策をなぞったような中身になった。大きな後退といえ、残念だ。

確かに、学校以外での学びの大切さを認め、休養の必要性に配慮して、支援するというくだりも盛り込まれている。公教育として位置づけるための一歩になり得ると見て、評価する声もある。

けれども、法案には、学校に通える子を正常とし、通えない子を問題視するという旧来の発想が貫かれているように読み取れる。

不登校の子向けの教育課程に基づく特例学校や、教育支援センター(適応指導教室)の整備という既存施策も、併記されている。学校に連れ戻す圧力が強まらないかと心配する声も出ている。

なにより、学校に通えず、蔑視されたり、自責の念にさいなまれたりして、自尊心に深手を負った子をどう救済するのか。社会の差別的な風潮を排し、不登校の子が自分らしく育つ権利を等しく保障するという視点は薄い。

かつて病気や怠慢、非行とされた不登校は一九九〇年代に、どの子にも起こり得るという認識に変わったはずだ。現状を見れば、今度は制度を手直しする番だろう。

子どものための法案である。議連は足並みをそろえてほしい。

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