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[東京新聞] 金正恩氏演説 核と経済は両立できぬ (2016年05月09日)

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北朝鮮の労働党大会で金正恩第一書記が演説し、自衛のため核戦力を強化するが、世界の非核化実現には努力すると述べた。どの国も到底認められない、身勝手な論理だと言わざるを得ない。

金第一書記は党大会で政治、経済全般の活動総括報告をし、内容が八日、公表された。四回の核実験に成功して「核保有国」になったと強調し、核戦力を質量ともに一層強化する方針を示した。

国際法の核拡散防止条約(NPT)では、米ロ中英仏を核保有国とみなすが、北朝鮮は今後、五カ国と同等の扱いをするよう要求するとみられる。「核保有は自主権に属し、放棄はしない」と、強引に主張するだろう。

一方で、他国に核を拡散させない義務を守ると言明したが、額面通りには受け取れない。北朝鮮はNPTからの脱退宣言をし、核施設への査察も拒否したままだ。警戒を緩めるわけにはいかない。

報告では、核開発と経済建設の「並進路線」を、恒久的に堅持すると強調した。

核戦力を強化すれば国内の求心力が高まる、核兵器があれば通常兵器の更新に必要な巨額の費用を節約できる、カネが余れば経済建設に回せる−。指導部はこんな皮算用をしているのではないか。

だが、核、ミサイル開発を続ける限り、国連安全保障理事会の決議に基づく国際社会の制裁が緩和される可能性は低い。石油や原材料は十分輸入できず、中国などからの外資導入も期待できない。自力更生で乗り切ろうとしても、限界がある。

金第一書記は報告で、二〇二〇年までの「国家経済発展五カ年戦略」を発表し、「人民経済の向上」に取り組むと繰り返し述べた。経済計画を策定し、その場しのぎの政策を改めようとする意欲には注目したい。それでも、制裁が続けば、核と経済の二兎(にと)を追うのはやがて行き詰まるだろう。両立はできないと知るべきだ。

外交面での報告では、米国に敵視政策の変更を重ねて求め、日本には過去の植民地支配の反省と謝罪を求めただけだった。韓国に対しては、非難しながらも、統一構想の論議など南北対話の再開と関係改善を訴えた。

金第一書記は大会に、人民服でなくスーツ姿で臨んだ。ソフトなイメージを打ち出し、対外的に柔軟になるのではとの臆測もある。だとすれば、まず核とミサイルの開発を中断し、外交に本格的に取り組むべきだろう。

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