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[日経新聞] 企業のトップ選びにもっと外部の声を (2016年05月10日)

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経営再建中の東芝は綱川智副社長を社長に起用する人事を発表した。新社長は医療機器部門を優良ビジネスに育てた実績があり、会計不祥事の舞台になったパソコンや半導体、インフラ事業とは無縁のクリーンな存在だ。

その意味で妥当な人選という見方が多いが、ここで注目したいのは、5人の社外取締役からなる同社の指名委員会が今回の人事を仕切ったという事実だ。

同委員会の委員長を務める小林喜光三菱ケミカルホールディングス会長は「東芝のように事業領域の広い会社は、いきなり外からトップを連れてきても機能しない」と判断し、生え抜きの人材から後継候補を10人ほど選んだ。

そのうえで指名委メンバーが各人に面接し最終的に綱川副社長に白羽の矢を立てたという。新会長選びや室町正志現社長が特別顧問に退く人事も同委が決めた。

日本企業には社外取締役へのアレルギーや不要論がなお根強く残る。だが東芝の例を見れば、社外取締役の役割の大きさがよく分かるのではないか。

同社は過去3代の社長在任期間に会計操作を続け、今の経営幹部の中にも問題となった事業部門の出身者が少なくない。

そんな人たちが寄り集まって新たな経営体制を決めても、普通の社員や社外の投資家、消費者への説得力に欠けるだろう。

外部の視点を持った指名委が主導することで、人事選考プロセスの客観性や信頼性が担保され、社会に対しても「新生東芝」をアピールしやすくなる。

経営が危機的でない業績好調の企業にとっても、外部の視点を取り入れて組織の風通しをよくすることは重要だ。世間の常識からかけ離れた「内輪の論理」をはびこらせてはならない。

社外取締役にトップ人事を全面的に委ねた東芝の手法に抵抗感を持つ企業は多いだろう。だが、外部の声を経営に反映する利点を踏まえるならば、各社各様の工夫が求められる。

健全なトップ選びは企業の持続的な成長にとって欠かせない条件だ。独りよがりな人事で経営が傾いた例は数多い。

社外取締役の役割拡大など企業統治の強化は、政府や証券取引所に言われてしぶしぶ実施するものではない。自らの未来を切り開くために、企業が主体的に取り組むべき課題である。

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