時代の転換点を象徴する交代である。世界最大の原油輸出国サウジアラビアで、20年以上にわたり石油政策のかじ取りにあたってきたヌアイミ石油鉱物資源相が退任した。後任には、国営石油会社サウジアラムコの会長を兼任するファリハ保健相が就いた。
昨年に即位したサルマン国王の下、サウジは石油依存からの脱却を掲げる経済・社会改革に踏み出した。逆説的だが、改革の前進には資金源となる石油をうまく使っていかねばならない。司令塔になるファリハ氏の役割は重大だ。
同時に石油の安定供給にサウジが果たすべき責任はこれからも変わらない。構造改革を着実に進めつつ、石油市場の安定へ主導的な役割を果たしてほしい。
国王の息子で改革を主導するムハンマド副皇太子は4月、非石油産業や民間部門の育成を柱とする長期改革構想を発表した。石油省は今回、トップ交代にあわせて産業政策や電力行政も担当する巨大な行政機関に衣替えした。
サウジは歳入の大半を原油輸出に依存する。このところの原油安で財政運営は厳しさを増している。増大する若年層人口と高い失業率はイスラム教の過激主義の温床にもなりかねない。雇用の創出や産業の育成に石油政策と一体で取り組む成果に期待したい。
心配なのは、ムハンマド副皇太子への権限集中に伴いサウジの石油政策が政治的な色彩を強めている点だ。主な産油国が4月に開いた会合では、サウジが外交面で対立するイランの同調にこだわり増産凍結で合意できなかった。
1995年の石油相就任以来、ヌアイミ氏は産油国だけでなく消費国とも対話を重ね信頼を得た。市場の調整役としてそのひと言は相場に絶大な影響力を持った。
原油安が消費国にもたらす恩恵は大きいが、世界経済に与える負の側面にも注意は必要だ。独善的な石油政策に陥ることなく、安定供給と、産油国と消費国の双方に適正な価格水準を探る姿勢を、サウジは忘れないでほしい。
昨年に即位したサルマン国王の下、サウジは石油依存からの脱却を掲げる経済・社会改革に踏み出した。逆説的だが、改革の前進には資金源となる石油をうまく使っていかねばならない。司令塔になるファリハ氏の役割は重大だ。
同時に石油の安定供給にサウジが果たすべき責任はこれからも変わらない。構造改革を着実に進めつつ、石油市場の安定へ主導的な役割を果たしてほしい。
国王の息子で改革を主導するムハンマド副皇太子は4月、非石油産業や民間部門の育成を柱とする長期改革構想を発表した。石油省は今回、トップ交代にあわせて産業政策や電力行政も担当する巨大な行政機関に衣替えした。
サウジは歳入の大半を原油輸出に依存する。このところの原油安で財政運営は厳しさを増している。増大する若年層人口と高い失業率はイスラム教の過激主義の温床にもなりかねない。雇用の創出や産業の育成に石油政策と一体で取り組む成果に期待したい。
心配なのは、ムハンマド副皇太子への権限集中に伴いサウジの石油政策が政治的な色彩を強めている点だ。主な産油国が4月に開いた会合では、サウジが外交面で対立するイランの同調にこだわり増産凍結で合意できなかった。
1995年の石油相就任以来、ヌアイミ氏は産油国だけでなく消費国とも対話を重ね信頼を得た。市場の調整役としてそのひと言は相場に絶大な影響力を持った。
原油安が消費国にもたらす恩恵は大きいが、世界経済に与える負の側面にも注意は必要だ。独善的な石油政策に陥ることなく、安定供給と、産油国と消費国の双方に適正な価格水準を探る姿勢を、サウジは忘れないでほしい。