領土問題解決に向けた契機となるのか。「新たな発想に基づくアプローチ」が何を指すのかは不明だが、北方四島が「日本固有の領土」という原則は維持しつつ、返還交渉を着実に前進させたい。
欧州歴訪の帰途、安倍晋三首相がロシア南部ソチを訪れ、プーチン大統領と会談した。首相は、北方領土問題や平和条約締結問題について「新たな発想に基づくアプローチで交渉を進める」ことを提案し、現首脳間で解決することで一致した、という。
先の大戦終結から七十年余り。ロシアは旧ソ連時代から北方四島(歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島)の不法占拠を続け、日ロ両国はいまだ平和条約が締結されていない異常な外交関係にある。
四島には一万七千人余りが住んでいたが、存命の元島民は六千六百人余りへと減っている。高齢化も進み、領土問題解決は急務だ。
四島は日本固有の領土だが、ロシア側は「大戦の結果、ロシア領になった」と領有を正当化する。解決に向けたハードルは高い。
首相は今回、極東地域での産業振興や石油・ガスなどのエネルギー開発、日本式最先端病院の建設など八項目の協力案を提示した。
新たなアプローチが何を指すか明確ではないが、四島の帰属を解決して平和条約を締結するという日本側の原則を堅持しつつ、経済協力を軸に幅広い関係を構築する中で、ロシア側に歩み寄りを促す外交手法は妥当であろう。
大統領は、九月にウラジオストクで開く東方経済フォーラムに首相を招待し、国際会議の機会をとらえて首脳会談を行うことでも合意した。大統領訪日の具体的日程についても議論したという。
こうした機会をとらえて首脳間の信頼醸成に努め、領土問題の解決に向けた気運を高めるべきだ。
ただ、ロシア側は北方領土で空港などインフラ整備を進め、政府要人の訪問も繰り返す。実効支配を強めようとする動きには、毅然(きぜん)とした態度で臨まねばなるまい。
ロシアには、国際社会での責任ある行動を促す必要もある。ウクライナ領クリミア半島の併合も北方領土の不法占拠も「力による現状変更」では同根だからだ。
首相は今月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務める。主要七カ国(G7)が結束してロシアに対し、国際社会との協調が自国の利益になると、粘り強く説得すべきだろう。それが北方領土問題の解決に向けた環境を整えることにもなる。
欧州歴訪の帰途、安倍晋三首相がロシア南部ソチを訪れ、プーチン大統領と会談した。首相は、北方領土問題や平和条約締結問題について「新たな発想に基づくアプローチで交渉を進める」ことを提案し、現首脳間で解決することで一致した、という。
先の大戦終結から七十年余り。ロシアは旧ソ連時代から北方四島(歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島)の不法占拠を続け、日ロ両国はいまだ平和条約が締結されていない異常な外交関係にある。
四島には一万七千人余りが住んでいたが、存命の元島民は六千六百人余りへと減っている。高齢化も進み、領土問題解決は急務だ。
四島は日本固有の領土だが、ロシア側は「大戦の結果、ロシア領になった」と領有を正当化する。解決に向けたハードルは高い。
首相は今回、極東地域での産業振興や石油・ガスなどのエネルギー開発、日本式最先端病院の建設など八項目の協力案を提示した。
新たなアプローチが何を指すか明確ではないが、四島の帰属を解決して平和条約を締結するという日本側の原則を堅持しつつ、経済協力を軸に幅広い関係を構築する中で、ロシア側に歩み寄りを促す外交手法は妥当であろう。
大統領は、九月にウラジオストクで開く東方経済フォーラムに首相を招待し、国際会議の機会をとらえて首脳会談を行うことでも合意した。大統領訪日の具体的日程についても議論したという。
こうした機会をとらえて首脳間の信頼醸成に努め、領土問題の解決に向けた気運を高めるべきだ。
ただ、ロシア側は北方領土で空港などインフラ整備を進め、政府要人の訪問も繰り返す。実効支配を強めようとする動きには、毅然(きぜん)とした態度で臨まねばなるまい。
ロシアには、国際社会での責任ある行動を促す必要もある。ウクライナ領クリミア半島の併合も北方領土の不法占拠も「力による現状変更」では同根だからだ。
首相は今月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務める。主要七カ国(G7)が結束してロシアに対し、国際社会との協調が自国の利益になると、粘り強く説得すべきだろう。それが北方領土問題の解決に向けた環境を整えることにもなる。