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[日経新聞] 比次期大統領は世界と対話を (2016年05月13日)

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フィリピンの大統領選でダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏(71)が勝利した。アキノ大統領が後継に指名した候補者らとの激戦を制した一因は、暴言とも呼べる数々の勇ましい発言だった。当選が決まった今、問われるのは大統領としての実際の行動力だ。

外交面の大きな課題は中国との南シナ海の領有権争いだ。アキノ政権は25年ぶりに米軍の自国への事実上の駐留を認め、ハーグの仲裁裁判所に裁定を求めるなど、国際社会と連携して中国に対抗する姿勢を鮮明にしてきた。

対して選挙戦でのドゥテルテ氏の発言は一貫性を欠いていて、就任後にどんな政策を打ち出すのか心配だ。フィリピンが東アジア全体の平和と安定のカギを握るという自覚と、関係各国との誠実で丁寧な話し合いを求めたい。

経済政策も不透明だ。アキノ政権は直接投資の呼び込みに力を入れ、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を表明するなど、開放的な経済運営で比較的高い成長率を維持してきた。その路線の継承を次期政権に期待したい。

同時に、現政権では成果が乏しい貧富の格差縮小に向けた取り組みが問われる。既得権益の打破はドゥテルテ氏の選挙戦の公約でもあり、前進すれば社会と政治の安定に役立つだろう。

最大の公約というべき犯罪と汚職の取り締まりでは過剰な抑圧や人権侵害につながりかねないとの懸念がある。市長としてダバオの治安を改善した実績の一方、適正な手続きを欠いたとの批判は少なくない。内外の声に耳を傾け世界との対話を心がけて欲しい。

米共和党の大統領候補として指名を確実にしたトランプ氏と同様に、ドゥテルテ氏も既存のエリートによる政治の打破を訴えて人気を集めた。それだけに具体的な政策は未知数なところが多い。

南シナ海の問題やTPPなど、フィリピンの針路は日本にとっても大きな意味を持つ。次期大統領との意思疎通を日本政府は速やかに進めてもらいたい。

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