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[東京新聞] 比新政権 対話を基本に政策を (2016年05月13日)

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フィリピン大統領選は過激な発言で注目を集めたダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏が勝利した。変革を求める国民の強い期待の表れだが、政策は焦らず慎重に進めてほしい。

とにかく型破りな新大統領だ。

検事出身で二十年以上ダバオ市長を務め、最大の実績は治安の回復だった。殺人や麻薬犯罪が横行して無法地帯とまでいわれたダバオ市を最も安全な街に生まれ変わらせた。ただ、超法規的に犯罪者を処罰する「暗殺団」を組織し、犯罪者を殺害した、との疑惑も取りざたされる。

フィリピンはアキノ政権下で年平均6%を超える高い経済成長を成し遂げた。その一方で、貧富の格差、インフラ整備の遅れが国民の政権批判を増大させていた。犯罪、汚職のまん延は一向に改善の兆しがなく、国民に既存政治家への無力感を抱かせていた。米大統領選共和党候補トランプ氏の人気と並び、時代の要請と見る向きもある。

ドゥテルテ氏への高い支持は、彼なら強権を発動してでも懸案を一気に解決してくれるのでは、との期待の表れだ。しかし、目に見える成果がでない時の失望も予想される。議会に足場のない地方政治家のドゥテルテ氏の今後の政策実行が不安視される。結果を求めるあまり性急な行動で混乱を招くことは慎んでほしい。

外交問題もフィリピンにとって重要な課題だ。中国と領有権を争う南シナ海問題は国際社会が注視する。アキノ政権は、強硬な行動に出る中国に対し、日、米とも連携し、軍事拠点化を阻止する方針で動いている。

外交手腕が未知数のドゥテルテ氏は、はっきりした方針は示していないが、対中問題は「対話していく」と宣言している。これまで通り米国と一体となり中国と対峙(たいじ)していくのか、中国に近づくのかは南シナ海周辺の安全にとって大きな問題だ。

ドゥテルテ氏は親日家という。ダバオ市には在留邦人も多く「日本を手本にしたい」とも話している。企業進出など経済的なつながりは、これまで以上に深まる可能性はある。当選が決まった後、ドゥテルテ氏は、「私は暴言者ではない」とし、選挙中とは違う現実的な側面も見せている。

各国との「対話」を主張しており、日本としても対話を進めていきたい。経済問題だけではなく、国際関係でもわが国が担える役割は大きいはずだ。

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