Quantcast
Channel: 新聞社説まとめサイト
Viewing all articles
Browse latest Browse all 17272

[東京新聞] 名古屋城復元 市民の熱意欠かせない (2016年05月14日)

$
0
0
天守閣の木造復元構想を巡りアンケートが実施される名古屋城

写真

詳細な実測図に基づき、往時そのままに木造の名古屋城天守閣を復元する−。夢のある計画ではあるが、市民の関心は高まっているだろうか。街のシンボルである。皆の心が盛り上がらねば。

河村たかし市長が旗を振る天守閣の木造復元計画について、名古屋市は、市民向けの説明会と二万人規模のアンケートを始めた。その結果を取りまとめ、六月議会に設計費などを盛り込んだ予算案を諮る。天守閣の行方を左右する岐路を迎えることになる。

事の発端は、鉄筋鉄骨コンクリート造りの現天守閣の耐震性。老朽化が進み、震度6強の地震で倒壊の恐れがあるという。

河村市長は、耐震改修をしても数十年の延命にしかならない、として、現天守閣を撤去して木造での復元を主張。東京五輪に間に合わせるべく二〇二〇年七月までの完成を目指している。

アンケートは「二〇年七月までの木造復元」「時期にはこだわらぬ木造復元」「現天守閣の耐震改修」という選択肢を示している。

木造復元の場合、事業費は約四百七十四億〜五百五億円。税金は使わずに市債の発行などで財源を確保し、全額、入場料収入で返済できるという。ただし、年間入場者が従来の倍の三百六十万人に増えると想定しての試算である。

一方、耐震改修の場合、事業費は約二十九億円。延命できる期間は約四十年だとしている。

徳川家康の命で五層五階の天守閣が完成したのは一六一二年。延べ床面積は江戸城天守を上回る規模で、一九三〇年には国宝第一号に指定された。その後、市が調査して詳細な実測図を残した。

その天守閣は四五年五月、空襲で焼失。現天守閣は復興のシンボルとして五九年に再建された。

わが街の城が焼け落ちる姿は二度と見たくない、と願ったコンクリートでの再建に、市民らは事業費の三分の一を寄付して心意気を示したのである。

確かに地震対策は待ったなしである。でも、東京五輪をにらんだ前のめりの建て替え論議に市民の心は付いてきているだろうか。

殿様の命で造る城ではない。市民の城を築くのに何より欠かせぬものは市民の意気込みだろう。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 17272

Trending Articles