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[日経新聞] 安全向上に直結する原発の検査制度に (2016年06月15日)

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原子力規制委員会は、原子力発電所が安全に運営されているかを点検する「保安検査」のやり方の見直しを決めた。

日本の原発の検査は形式主義がはびこり非効率だと、東京電力・福島第1原発事故の前から指摘されてきた。事故後に原子力規制委が発足して施設の安全基準は改めたが、検査の基準については手つかずのままだ。

すでに再稼働をした原発があり、見直しは遅きに失した感がなくはない。安全性の向上に確かにつながる実効性の高い検査制度に早急に改めるべきだ。

見直しは国際原子力機関(IAEA)からの指摘を受けたものだ。IAEAは日本の規制の現状を調べ、「検査の実効性を高めるよう法律改正が必要だ」など改善策を今年1月に規制委に伝えた。規制委は近く改革の方向性を示し原子炉等規制法の改正を目指す。

原発の検査には稼働前の「使用前検査」や、稼働後にほぼ1年ごとに実施する「定期検査」などがある。

現状では検査時に機器類が基準に適合しているかをまず電力会社が点検し、原子力規制庁が重ねて確かめる。これが往々にして形式を整えるだけの作業に陥りがちだと聞く。確認をおろそかにはできないが、ムダな重複を減らしメリハリをつければ、安全性を高めるうえでより効果的な対策に人員や時間を振り向けられる。

規制庁の検査官の権限を強める必要もある。検査に立ち入る日程や検査項目を電力会社との間で事前に決めるのがいまは通例だが、抜き打ち的に立ち入り、自由に見て回れる法的な裏付けを検査官に与えるべきだ。米国では「フリーアクセス」と呼ばれ、検査官が運転データなども自由にチェックでき、トラブルなどの隠蔽ができない仕組みになっている。

検査成績に基づき報奨や罰則を与えることも検討課題だ。安全への努力が秀でた原発は検査期間を短縮するなどメリットが得られるようにしたらどうか。

実行には課題も多い。能力がないのに権限をもつ「悪代官」の検査官が生まれては困る。検査官の研修・教育を充実させ仕事ぶりを客観的に評価する仕組みも要る。

検査のやり方を変えて原発の安全性がどれほど高まったかがわかる指標を規制委には設けてほしい。改革の効果を示せば、規制への国民の信頼感も高まるはずだ。

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