国と国民守り抜く覚悟あるか
日本が直面している内外の危機は、深刻さを増している。きょう公示される参院選では、どうやって国家として生き残り、国民の生活を守っていくかの構想力が問われている。
21日の日本記者クラブ主催の党首討論会では、その問いに対する明快な答えを与野党から聞くには至らなかった。
不人気な政策、国民に痛みを求める政策であっても、必要なものなら正面から提示し、理解を得る必要がある。それなしには選挙を重ねても、現実の懸案解決にはつながりにくいからだ。
≪安保の現実に目向けて≫
国民の関心と懸念に回答しようという姿勢が特に希薄なのが、外交・安全保障の分野である。
中国の軍艦が、尖閣諸島(沖縄県)周辺の接続水域や口永良部島(くちのえらぶじま)(鹿児島県)周辺の領海に侵入した。中国は南シナ海で、国際法を無視し、人工島の軍事拠点化を進め、地域や国際社会にとっても大きな懸念となっている。
北朝鮮の弾道ミサイル発射の兆候があるとして、中谷元(げん)防衛相は21日、自衛隊に迎撃を認める破壊措置命令を出した。
こうした環境に日本があることを、各党はもっと強く認識すべきである。国と国民をどう守り抜いていくか、日本に有利な外交環境をいかに醸成すべきか。いずれも横に置いて済ませられる課題ではなかろう。
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その観点からも、民進党の岡田克也代表が、自衛隊を「憲法違反」と断じた共産党の志位和夫委員長とともに安全保障関連法の廃止を主張しているのは、無責任のそしりを免れない。国民の生命と安全を守る責務を、初めから放棄している。
安保関連法は戦争を抑止して平和を維持する法制だ。集団的自衛権の限定行使を容認し、日米同盟の抑止力を強めた。安倍晋三首相が「日米が力を合わせられるようになり、日本の安全はさらに強化された」と語ったのは妥当だ。
岡田氏は「安保法ができる前の状態に戻すことで、日米同盟がおかしくなるという話は成り立たない」と語ったが、耳を疑う。
自衛隊と米軍がより守り合えるようになった安保法をもし廃止すれば、米政府や米国民は、日本を仲間の国だとどこまで思い続けるだろうか。
同盟関係が損なわれると考えるのが普通だ。そうなって喜ぶのが日米同盟を敵視する国々であることにもし気付かないなら、国政を語る資格があるだろうか。
安保法の是非にとどまらず、安保環境の現実を直視した上で、日本の平和を積極的に守っていく具体的方策が問われている。
軍事力による威嚇、挑発をためらわない中国、北朝鮮などにどのように対応していくべきか。自衛隊の態勢や外交政策に改めるべき点や一層力を入れるべき点はないのか。国民の前で具体論を語ってほしい。
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≪将来へのツケ回避せよ≫
国民の関心が大きい経済政策や社会保障をめぐる議論の内容もいまだ低調である。
デフレ脱却による経済再生が最優先課題であることは言うまでもない。アベノミクスは道半ばだというなら、民間の活力を高める規制改革などの成長戦略を加速させる必要がある。
だが首相はそれには具体的に言及しなかった。有権者は、経済をどうやって底上げするかの方策を聞きたいのだ。
岡田氏は、平成32年度にプライマリーバランスを黒字化させる政府目標に関し「無理だ」と指摘し、首相は「簡単な目標ではない」と語った。どうしたら将来世代にツケを回さずにすむか、さらに突っ込んだ議論がほしい。
消費税増税の再延期で実施が危ぶまれる社会保障政策の財源に関し、首相は「税収を増やし安定財源を確保する」という。当面はしのげたとしても、それを安定財源と言うのは無理だ。
おおさか維新の会の片山虎之助共同代表が、社会保障・税一体改革を継続するのか、首相に問うたのは理解できる。
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憲法改正について、首相は「自民党は結党以来、憲法改正を掲げてきた」と述べたが、遊説先でも堂々と訴えるべきだ。
「18歳以上」の新有権者に限らず、すべての有権者に高い関心を抱いてもらうには、各党が意味のある選択肢を示すのが先決だ。
日本が直面している内外の危機は、深刻さを増している。きょう公示される参院選では、どうやって国家として生き残り、国民の生活を守っていくかの構想力が問われている。
21日の日本記者クラブ主催の党首討論会では、その問いに対する明快な答えを与野党から聞くには至らなかった。
不人気な政策、国民に痛みを求める政策であっても、必要なものなら正面から提示し、理解を得る必要がある。それなしには選挙を重ねても、現実の懸案解決にはつながりにくいからだ。
≪安保の現実に目向けて≫
国民の関心と懸念に回答しようという姿勢が特に希薄なのが、外交・安全保障の分野である。
中国の軍艦が、尖閣諸島(沖縄県)周辺の接続水域や口永良部島(くちのえらぶじま)(鹿児島県)周辺の領海に侵入した。中国は南シナ海で、国際法を無視し、人工島の軍事拠点化を進め、地域や国際社会にとっても大きな懸念となっている。
北朝鮮の弾道ミサイル発射の兆候があるとして、中谷元(げん)防衛相は21日、自衛隊に迎撃を認める破壊措置命令を出した。
こうした環境に日本があることを、各党はもっと強く認識すべきである。国と国民をどう守り抜いていくか、日本に有利な外交環境をいかに醸成すべきか。いずれも横に置いて済ませられる課題ではなかろう。
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その観点からも、民進党の岡田克也代表が、自衛隊を「憲法違反」と断じた共産党の志位和夫委員長とともに安全保障関連法の廃止を主張しているのは、無責任のそしりを免れない。国民の生命と安全を守る責務を、初めから放棄している。
安保関連法は戦争を抑止して平和を維持する法制だ。集団的自衛権の限定行使を容認し、日米同盟の抑止力を強めた。安倍晋三首相が「日米が力を合わせられるようになり、日本の安全はさらに強化された」と語ったのは妥当だ。
岡田氏は「安保法ができる前の状態に戻すことで、日米同盟がおかしくなるという話は成り立たない」と語ったが、耳を疑う。
自衛隊と米軍がより守り合えるようになった安保法をもし廃止すれば、米政府や米国民は、日本を仲間の国だとどこまで思い続けるだろうか。
同盟関係が損なわれると考えるのが普通だ。そうなって喜ぶのが日米同盟を敵視する国々であることにもし気付かないなら、国政を語る資格があるだろうか。
安保法の是非にとどまらず、安保環境の現実を直視した上で、日本の平和を積極的に守っていく具体的方策が問われている。
軍事力による威嚇、挑発をためらわない中国、北朝鮮などにどのように対応していくべきか。自衛隊の態勢や外交政策に改めるべき点や一層力を入れるべき点はないのか。国民の前で具体論を語ってほしい。
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≪将来へのツケ回避せよ≫
国民の関心が大きい経済政策や社会保障をめぐる議論の内容もいまだ低調である。
デフレ脱却による経済再生が最優先課題であることは言うまでもない。アベノミクスは道半ばだというなら、民間の活力を高める規制改革などの成長戦略を加速させる必要がある。
だが首相はそれには具体的に言及しなかった。有権者は、経済をどうやって底上げするかの方策を聞きたいのだ。
岡田氏は、平成32年度にプライマリーバランスを黒字化させる政府目標に関し「無理だ」と指摘し、首相は「簡単な目標ではない」と語った。どうしたら将来世代にツケを回さずにすむか、さらに突っ込んだ議論がほしい。
消費税増税の再延期で実施が危ぶまれる社会保障政策の財源に関し、首相は「税収を増やし安定財源を確保する」という。当面はしのげたとしても、それを安定財源と言うのは無理だ。
おおさか維新の会の片山虎之助共同代表が、社会保障・税一体改革を継続するのか、首相に問うたのは理解できる。
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憲法改正について、首相は「自民党は結党以来、憲法改正を掲げてきた」と述べたが、遊説先でも堂々と訴えるべきだ。
「18歳以上」の新有権者に限らず、すべての有権者に高い関心を抱いてもらうには、各党が意味のある選択肢を示すのが先決だ。