Quantcast
Channel: 新聞社説まとめサイト
Viewing all articles
Browse latest Browse all 17272

[東京新聞] 仏トラック突入 むしばまれる自由守れ (2016年07月16日)

$
0
0
フランスが再び、テロに襲われた。昨年一月の政治週刊紙銃撃テロ以降、三度目だ。予防策に落ち度はなかったか、仏当局は検証が必要だ。それに、再発防止に当たり気をつけるべきこともある。

国際社会からはテロ非難とともに、連帯を呼び掛ける声が相次いでいる。実際、世界中に拡散するテロに対処するには、一国では限界がある。

情報の交換・共有、ネットを通じて過激思想が拡散するのを防ぐ方策などで、国際協力を一層強化しなくてはならない。

オランド仏大統領は十四日、「非常事態宣言をいつまでも続けるわけにはいかない。それはナンセンスだ」と述べ、昨年十一月のパリ同時多発テロ後に発動した非常事態宣言の解除を、いったんは表明した。

ところが、このテロを受けて三カ月延長することに方針転換した。これで延長は四度目だ。

非常事態の下では、令状なしの家宅捜索、集会やデモの禁止といった強力な権限が治安当局に与えられる。非常事態を長期にわたって敷いても、なぜテロを防げなかったのか。仏政府はその洗い直しが必要だ。

それに、市民の権利が大幅に制限される事態が続くのは、決して好ましいことではない。

非常事態の「常態化」によって、当局の人権感覚がまひしないか、心配だ。今でも、非常事態は人権や自由を侵害するものだ、との批判は強い。

米国では二〇〇一年の中枢同時テロ以降、治安当局が不特定多数を対象に、通話記録の大規模な収集を続けていたことが発覚した。

行き過ぎたテロ対策によって、自由や人権がこれ以上、むしばまれることがないよう、オランド政権は心掛けてほしい。

こうしたテロが起きるたびに、仏社会では移民やイスラム教徒への反感が高じることになる。社会の分断は深まり、疎外された人がさらなるテロ行為へ走る悪循環に陥りかねない。

フランスでは来年、大統領選が予定されている。排他意識の高まりは、極右政党の国民戦線を率いるルペン党首に有利に働くだろう。

米大統領選でも、パリ同時多発テロ後、ドナルド・トランプ氏がイスラム教徒の入国禁止を訴えて、支持を集めた。

「自由・平等・博愛」の三色旗を掲げるフランスが、そんなわなにはまるとは考えたくもない。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 17272

Trending Articles