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[毎日新聞] 社説:傾きマンション 不安解消へ検査を急げ (2015年10月17日)

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横浜市の大型マンションの施工不良は、住まいへの信頼を根底から揺るがせている。事業主、請け負った施工者それぞれが対応に乗り出しているが、原因の究明と再発防止の対策が早急に必要だ。

問題になっているのは、三井不動産レジデンシャルが事業主のマンションだ。孫請けとして、旭化成建材が建物を支えるくいを打ちこむ工事を請け負った。だが、くいの一部が固い地盤まで届いていなかった。

そのためマンションが傾いた。同社は、くい打ちの際に作成する地盤調査のデータ偽装を認めた。

同社の親会社である旭化成は、旭化成建材が手がけた全国のマンションや商業ビル3000棟について、安全性を確認する。また、社内に調査委員会を設け原因を調べる。

一部の担当者による行為なのか、恒常的に不正が行われていて今後広がりを見せるのか。徹底的な解明を求めたい。調査対象の建物には、大勢の利用者や住民がいる。不安解消のため検査は速やかに進めるべきだ。結果の説明など透明性も必要だ。

事業主の三井側の責任は大きい。

住民説明会では、傾いた1棟だけでなく、全4棟の建て替えを基本線に住民と協議する意向を示した。住民の考え方はさまざまだろう。経緯をしっかり説明し、話し合いを尽くして解決策を模索するしかない。

仮に建て替えるとすれば、マンション入居者の年単位の転居を伴う。人生設計の変更が必要な人も出るだろう。横浜市など行政の協力も得て、住民支援に当たってほしい。

マンション建設を全国で展開する伝統のブランドは大きく傷ついた。今回の問題では、渡り廊下の結合部のずれについて当初、東日本大震災の影響を示唆して住民の不信感を募らせた。信頼回復のためにも、今後の誠意ある対応が不可欠だ。

一方、横浜市は、建築基準法違反を視野に調査する。同市では別の大型マンションが傾いたことが判明し、市は昨年是正勧告した。今回も、問題の所在を行政の立場から点検し、再発防止に役立ててもらいたい。

2020年の東京五輪・パラリンピックを前に、建設業界は繁忙を極める。建設現場の作業員不足などが原因でマンションなどの完工予定には遅れが出ている。一方、資材の高騰で、施工者に対してコストの削減圧力が高まっているという。

工期やコストなど現場にとって厳しい条件下、手抜き工事や突貫工事を心配する声があるのは事実だ。

今回のマンション自体の完工は07年だが、不正を生んでしまうような土壌が今あるとすれば見過ごせない。まずは事業主が目を光らせ、施工の監理を強化してほしい。

2015年10月17日 02時40分

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