お酒の安売りを規制することを狙った法改正が、本格的な国会審議もないままほぼ全会一致で決まり、新たな仕組みが来年春までに始まる。
先の通常国会で成立した、酒税法と酒類業組合法の改正法の話である。
新たな仕組みは、まず、お酒のメーカーや販売業者が守らなければならない「公正な取引の基準」を財務相が作る。違反した業者には指示や公表、命令、さらには罰金を科し、免許取り消しもできるというものだ。
酒税はメーカーが出荷段階で納めるが、実際に負担するのは最終的にお酒を買う消費者だ。製造から卸、小売りへと各段階で税金が価格に転嫁されていく仕組みである。行き過ぎた安売りで卸や小売りが揺らぐと、税金転嫁のつながりも危うくなり、税収に響きかねない。そんな問題意識があるという。
税収への影響をいうまでもなく、ライバルを廃業に追い込もうと原価を割り込んだ安値で売るような行為は許されない。そうした不当廉売は独占禁止法に基づき公正取引委員会が取り締まればよい。
安売り規制の仕組みづくりは、大手量販店に押されがちな中小零細の酒販店が求めてきた。国会会期末が近づいていた5月、議員立法で法改正が提起されると、夏の参院選への思惑からか与野党がこぞって賛成した。そんな経緯を見るにつけ、消費者の利益より業界保護が優先されないかと心配になる。
政府がまず問われるのは、財務相が決める「公正な取引の基準」だ。
基準作りにあたっては、業者の適切な経営努力による事業活動を妨げて消費者の利益を損なうことがないように、とくぎを刺す規定が改正法に盛り込まれた。具体的な内容については、公取委と協議しつつ、国税庁の審議会に諮るともされている。独禁法の規定と整合性をとりながら、過度な規制にならないようにすることが欠かせない。
お酒の安売りをめぐっては、飲酒による健康への悪影響やアルコール依存、未成年者の飲酒との関係を指摘する声も根強い。だが、そうした問題に価格で対応するのは筋が違うのではないか。販売業者への研修や教育、消費者への啓発に力を入れるべき課題だろう。
価格が下がって助かるのは消費者だ。広く消費者の利益を高めていくことこそが、政策の出発点であるはずだ。
政府はその原則を肝に銘じ、具体的な制度づくりと運用にあたってほしい。
先の通常国会で成立した、酒税法と酒類業組合法の改正法の話である。
新たな仕組みは、まず、お酒のメーカーや販売業者が守らなければならない「公正な取引の基準」を財務相が作る。違反した業者には指示や公表、命令、さらには罰金を科し、免許取り消しもできるというものだ。
酒税はメーカーが出荷段階で納めるが、実際に負担するのは最終的にお酒を買う消費者だ。製造から卸、小売りへと各段階で税金が価格に転嫁されていく仕組みである。行き過ぎた安売りで卸や小売りが揺らぐと、税金転嫁のつながりも危うくなり、税収に響きかねない。そんな問題意識があるという。
税収への影響をいうまでもなく、ライバルを廃業に追い込もうと原価を割り込んだ安値で売るような行為は許されない。そうした不当廉売は独占禁止法に基づき公正取引委員会が取り締まればよい。
安売り規制の仕組みづくりは、大手量販店に押されがちな中小零細の酒販店が求めてきた。国会会期末が近づいていた5月、議員立法で法改正が提起されると、夏の参院選への思惑からか与野党がこぞって賛成した。そんな経緯を見るにつけ、消費者の利益より業界保護が優先されないかと心配になる。
政府がまず問われるのは、財務相が決める「公正な取引の基準」だ。
基準作りにあたっては、業者の適切な経営努力による事業活動を妨げて消費者の利益を損なうことがないように、とくぎを刺す規定が改正法に盛り込まれた。具体的な内容については、公取委と協議しつつ、国税庁の審議会に諮るともされている。独禁法の規定と整合性をとりながら、過度な規制にならないようにすることが欠かせない。
お酒の安売りをめぐっては、飲酒による健康への悪影響やアルコール依存、未成年者の飲酒との関係を指摘する声も根強い。だが、そうした問題に価格で対応するのは筋が違うのではないか。販売業者への研修や教育、消費者への啓発に力を入れるべき課題だろう。
価格が下がって助かるのは消費者だ。広く消費者の利益を高めていくことこそが、政策の出発点であるはずだ。
政府はその原則を肝に銘じ、具体的な制度づくりと運用にあたってほしい。