東京の地下鉄駅で、視覚障害者の男性が線路に転落し、電車にひかれて死亡した。痛ましい事故である。再発を防がねばならない。
現場となった東京メトロ銀座線の青山一丁目駅ホームは、幅が3メートルしかなく、複数の太い円柱も立っている。盲導犬を連れて歩いていた男性は、柱の手前でホームの端に近付き、足を踏み外したという。
盲導犬には線路側を歩かせることが多いが、事故時は逆側にいた。危険を察知した駅員が線路から離れるよう放送で注意喚起したものの、事故を防げなかった。
視覚障害者のホームからの転落事故は年70件以上、発生している。視覚障害者の4割近くが転落を経験しているとの調査結果もある。対策に猶予はないことを、全鉄道事業者は認識せねばなるまい。
転落防止に最も有効なのはホームドアだが、今回の現場には設置されていなかった。
国土交通省は、1日の利用客が10万人以上の駅には優先的に整備するよう、5年前から鉄道事業者に求めてきた。しかし、該当する全国251駅のうち、設置済みの駅は3割に過ぎない。
整備が遅れている理由として、事業者は多額のコストを挙げる。JR東日本が進める山手線の全29駅への設置には、550億円を要するという。容易に賄える額ではないのも事実だ。
ホームによっては、強度や広さといった構造上の問題もある。複数の事業者が相互に乗り入れる路線では、車両の扉の位置が一定しないという事情も指摘される。
一方で、様々な工夫も講じられている。一般的なスライド式ホームドアではなく、バーやロープで遮る方式を導入した駅がある。費用や重量を大幅に減らせるのがメリットだ。車両に応じて開閉位置が変わるドアの開発も進む。
4月には、東京メトロの別の駅で、ベビーカーを扉に挟んだまま電車が発車する事故があった。これもホームドアが設置されていれば防げていた可能性が強い。
官民でさらに知恵を絞り、整備を加速させてほしい。
設置がどうしても困難な駅では、駅員の支援がより重要だ。東京メトロは障害者への積極的な声掛けを各駅に通知した。
利用者にも、目の不自由な人が近くにいたら、注意を促す心配りが求められよう。危険なのは「歩きスマホ」だ。視覚障害者に衝突し、思わぬ事故を招きかねない。厳に慎みたい。
現場となった東京メトロ銀座線の青山一丁目駅ホームは、幅が3メートルしかなく、複数の太い円柱も立っている。盲導犬を連れて歩いていた男性は、柱の手前でホームの端に近付き、足を踏み外したという。
盲導犬には線路側を歩かせることが多いが、事故時は逆側にいた。危険を察知した駅員が線路から離れるよう放送で注意喚起したものの、事故を防げなかった。
視覚障害者のホームからの転落事故は年70件以上、発生している。視覚障害者の4割近くが転落を経験しているとの調査結果もある。対策に猶予はないことを、全鉄道事業者は認識せねばなるまい。
転落防止に最も有効なのはホームドアだが、今回の現場には設置されていなかった。
国土交通省は、1日の利用客が10万人以上の駅には優先的に整備するよう、5年前から鉄道事業者に求めてきた。しかし、該当する全国251駅のうち、設置済みの駅は3割に過ぎない。
整備が遅れている理由として、事業者は多額のコストを挙げる。JR東日本が進める山手線の全29駅への設置には、550億円を要するという。容易に賄える額ではないのも事実だ。
ホームによっては、強度や広さといった構造上の問題もある。複数の事業者が相互に乗り入れる路線では、車両の扉の位置が一定しないという事情も指摘される。
一方で、様々な工夫も講じられている。一般的なスライド式ホームドアではなく、バーやロープで遮る方式を導入した駅がある。費用や重量を大幅に減らせるのがメリットだ。車両に応じて開閉位置が変わるドアの開発も進む。
4月には、東京メトロの別の駅で、ベビーカーを扉に挟んだまま電車が発車する事故があった。これもホームドアが設置されていれば防げていた可能性が強い。
官民でさらに知恵を絞り、整備を加速させてほしい。
設置がどうしても困難な駅では、駅員の支援がより重要だ。東京メトロは障害者への積極的な声掛けを各駅に通知した。
利用者にも、目の不自由な人が近くにいたら、注意を促す心配りが求められよう。危険なのは「歩きスマホ」だ。視覚障害者に衝突し、思わぬ事故を招きかねない。厳に慎みたい。