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[読売新聞] タクシー新運賃 乗客目線で需要開拓できるか (2016年08月28日)

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タクシー業界を取り巻く環境は厳しい。多様な利用者ニーズを汲(く)み取って、需要を開拓する創意工夫が求められる。

東京都内で、タクシーの初乗り運賃を引き下げる国土交通省の実証実験が始まった。JR新橋駅前など4か所で、初乗りを730円から410円に値下げした車両を運行させる。

利用状況や乗客アンケートで新運賃の効果を検証するという。

410円の区間は、730円区間の約半分の1キロ余だ。2キロ走れば現在の運賃並みとなる。

東京23区などの事業者の約8割が新運賃を国交省に申請済みで、年内にも引き下げが実現する。

東京の初乗り運賃は、ニューヨークやロンドンよりも割高で、利用しにくいと指摘されていた。

運賃引き下げで、利用者の選択肢が広がることは歓迎できる。

新たな運賃体系では、近距離の引き下げ分を補うため、遠距離料金は引き上げられる。

初乗り運賃の引き下げで利用客を増やせれば、単価は安くなっても全体の収入は増加しよう。逆に、遠距離客の敬遠が多ければ、収入減となる恐れもある。

近距離利用の多い高齢者や家族連れ、外国人観光客らへの浸透と、潜在的な利用客の開拓が、新運賃の成否のカギとなろう。

国内のタクシー利用者は最近10年間で2割以上も落ち込んだ。国交省によると、運賃の割高感に加え、景気低迷による法人利用の減少や鉄道・バス路線の整備などが複合的に影響しているという。

2002年のタクシー参入の自由化後、事業者は、車両数の増加で売り上げを確保する傾向を強めた。過当競争を是正する再規制もあり、近年は車両数が減少に転じたが、業界が長期低落状況にあるのは否めない。

大切なのは、タクシーの「身近な交通手段」の役割を利用者に積極的に売り込むことだろう。

妊婦に最優先で配車する「陣痛タクシー」や、子供を専門に保育園や塾に送迎する車両など、新たな取り組みが始まっている。

外国人訪日客を対象に、多言語対応を掲げる車両が増えている。鳥取市では、自治体の補助で割安な観光サービスを行う「1000円タクシー」の例もある。

大量輸送の交通機関と比べて、乗客一人ひとりにきめ細かく対応できるのがタクシーの長所だ。様々な利便性の向上策に、大いに知恵を絞ってもらいたい。

高齢者や障害者など、交通弱者に寄り添う視点も欠かせない。

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