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[朝日新聞] 国立劇場50年 守りながら「攻め」も (2016年08月28日)

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伝統芸能の拠点である国立劇場ができて50年になる。

国立劇場は、歌舞伎、文楽、能狂言、日本舞踊、邦楽、民俗芸能などを、公演や研究を通じて保存、振興している。1966年に東京都千代田区に大小二つの劇場が開場。79年に隣接して演芸場、83年に能楽堂(渋谷区)、84年に文楽劇場(大阪市)と続き、04年に国立劇場おきなわ(浦添市)が加わった。

この半世紀の大きな成果はまず、研修生を公募し、伝統芸能の担い手を育てたことだ。特に文楽は、85人の技芸員(演者)の半分以上が国立劇場育ちだ。

歌舞伎でも約300人いる俳優の3割以上は研修出身者。歌舞伎に欠かせない竹本(義太夫)の語り手と三味線も大半を占め、歌舞伎座などでも舞台を支えている。

開場直後に始めた鑑賞教室は入場料を低く抑え、幅広い人が歌舞伎に触れる機会になっている。高校生が団体で訪れる。

こうした積み重ねは意義深い。だが活動のほとんどが劇場の中にとどまっているのは物足りない。

鑑賞教室を活用できる学校は首都圏に偏る。国の劇場なのだから、地方にも機会を提供してもらいたい。独自の公演が難しくても、例えば、松竹が各地の公共ホールを結んで実施する巡業と連携するなど、工夫ができるのではないだろうか。

地方の民俗芸能の公演や保存にも、もっと力を入れたい。

多彩な芸能の魅力を発信する力を強める必要もある。

初心者に芸の深みを見せる催しやテーマを絞った舞台など、柔軟な発想で企画を練り、劇場を飛び出して全国で上演するような積極性を期待したい。

外国語対応の拡充も欠かせない。6月に行った英語、韓国語、中国語のイヤホンガイド付き歌舞伎公演が外国人観客に好評だったという。だが、年数回では不十分だ。多言語リーフレットのような素朴なものから、メガネ型端末をかけると字幕が見えるといった最新技術の研究まで、検討の幅は広い。観光振興の面からも公的な支援があっていい事業だろう。

国立劇場は21年度以降に大規模な改修が計画されている。新しい劇場をどんな場にしたいか、観客も巻き込んだオープンな議論が行われるといい。

もちろん基本は質の高い公演を続けることだ。作品の全体像を見せる「通し上演」や、埋もれた作品や演出の復活など、培ってきた国立らしさを守り、充実させながら、100年に向けて攻めの構想も描いてほしい。

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