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[読売新聞] 五輪招致疑惑 「違法性なし」で幕は引けない (2016年09月04日)

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疑惑を招く巨額の契約を結んだこと自体、重大な失態である。

2020年東京五輪の招致活動を巡る不正送金疑惑で、日本オリンピック委員会(JOC)の調査チームが、違法性はなかった、とする報告書を公表した。

招致委員会がシンガポールのコンサルタント会社に支払った約2億3000万円について、報告書は「五輪関係者への贈与の認識を何ら有していなかった」と認定して、贈賄を否定した。

これをもって疑惑が晴れたとは到底、言えまい。

招致委から国際陸上競技連盟のラミン・ディアク前会長やその息子に賄賂が渡ったのではないか。それが疑惑の核心だ。

国際オリンピック委員会(IOC)委員も務めたディアク氏は、ロシア陸連のドーピング違反の隠蔽に関わった疑いで、仏検察当局の捜査対象となっている。

今回の調査で、コンサルタント会社の代表やディアク父子からの聞き取りはできなかった。

約2億3000万円はどのように使われたのか。適正なロビー活動は行われたのか。こうした疑問を解くには、カギを握る人物に直接質(ただ)すことが不可欠である。

強制捜査権を有しない弁護士や公認会計士による調査には、限界があった。不十分な報告書を公表し、誰も責任を取らずに疑惑に幕を引くことは許されない。

仏当局の捜査の進展次第では、JOCなどが新たな対応を迫られる可能性があるだろう。

コンサルタント料の相場は、約1億円だとされる。報告書が指摘するように、問題の契約は「相対的に高額」だった。

先方の言い値で額が決まるケースもあるという。招致委は、広告大手「電通」を通じてコンサルタント会社の実態を確認し、契約したが、足元を見られ、法外な額を請求された疑念は拭えない。

招致委の理事長は、竹田恒和JOC会長が務めていた。コンサルタント料は2分割され、2回目は成功報酬として支払われた。招致委の事務局長が、竹田氏に事前説明せずに契約を進めた。

報告書は「手続きの透明性や組織内の意思疎通が不足していた」と批判している。「寄り合い所帯的な雰囲気」が組織の問題点だったとの見方も示した。

寄り合い所帯という点では、現在の大会組織委員会も同様だ。五輪の準備が本格化する中、ガバナンスを確立し、責任の所在を明確にする必要がある。

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