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[産経新聞] 【主張】露大統領招請 領土交渉で原則崩せない (2016年09月04日)

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プーチン露大統領の12月来日が決まった。しかも、安倍晋三首相の地元である山口県を会談の舞台にするという。

2年前のロシアによるクリミア併合後、先進7カ国(G7)を中心に国際社会は経済制裁を科している。むろん日本もその一員だ。孤立するロシアの権力者との関係に踏み込むことには、米国をはじめ懸念も大きい。

G7の足並みを崩すことにもつながりかねず、大きなリスクを伴うと言わざるを得ない。

それをいとわないのは、首相が北方領土問題解決への大きな足がかりをつかもうという決意を抱いているからだろう。

政治指導者の強い意志に基づく外交を否定はしない。大きな転機を得られる可能性もある。

しかし、不法に占拠された北方四島の返還がなければ、平和条約締結をはじめ両国関係の完全なる正常化はあり得ない。その原則から外れることは許されない。

その意味で大いに懸念されるのは、経済関係の改善に前のめりとなっている今の姿勢である。

安倍首相は訪露に先立ち、ロシア経済分野協力担当相を新設し、世耕弘成経済産業相をあてた。

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特定の国との協力に関する担当相の設置は異例で、ロシアが経済協力を望んでいることに積極的に対応する意思表示といえる。

経済協力が強まれば、政治での関係も緊密になり、領土問題の打開の道も見つかる。そうした発想は、政府のみならず経済界にもこれまであった。

経団連の調査では、多くの日本企業がロシアでのビジネスを有望とみる半面、地方行政当局の不当な要求など、行政や法制度上の問題点を指摘していた。

これらの不安の根っこにあるものこそ、北方領土を返還しないロシアへの抜きがたい不信感ではないのか。

経済関係を呼び水にしようという考えは、それ自体が矛盾を抱えているのだ。

旧ソ連時代の末期から、政府は「政経不可分」から「拡大均衡」と呼ぶ路線に乗り換え、経済関係拡大の先行を模索してきた。

そのなかで浮上してきたのが、四島一括返還の原則を崩す部分的な返還論などだった。

重要なのは、その四半世紀の間も領土問題は微動だにしなかった現実を忘れないことである。

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