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[朝日新聞] 検察審査会 信頼定着に向け改善を (2016年10月05日)

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検察が起訴を見送った事件について、くじで選ばれた市民が再捜査を促したり起訴を強制的に決めたりする、いまの検察審査会制度になって7年になる。

これまでの経験をふまえ、日本弁護士連合会が次のような改善案をまとめた。

審査の対象になった容疑者が求めれば、口頭や書面で言い分を主張できるようにする▽審査に立ち会い、市民の助言役となる「補助弁護士」を複数選任できる制度にする▽強制起訴になったときに検察官役を務める弁護士の権限を強め、補充捜査をしやすくする▽審査会の日時や審査員の男女比・年齢構成などの情報を公開する――。

いずれも朝日新聞が社説で唱えてきた内容と重なる。政府・国会は提案を真剣に受けとめ、改革にとり組んでほしい。

とりわけ容疑者に意見陳述の機会を与える見直しは必須だ。現在のしくみでは、審査の申し立てがあったことすら知らされず、本人が弁明する機会のないまま、いきなり強制起訴となる可能性がある。適正手続きの観点にてらして疑問は大きい。

補助弁護士の複数制にも前向きにとり組んでほしい。一人だけではその弁護士の能力や個性が結論に過度な影響を与えかねない。実際、専門家の多くが首をひねる法解釈の上に導かれたと思われる議決もある。

制度を安定的に運営し、社会の信頼を得るには、各地の審査会事務局と弁護士会が連携をとりあい、適切な人材を起用し、説得力のある議決書をまとめることが欠かせない。

これまで強制起訴を経て判決や決定に至った8件のうち、有罪は2件にとどまるとあって、審査会への風当たりはきつい。だが、この数字だけで全体を論ずるのは性急にすぎる。

審査会が強制起訴の結論を出さなくても、再捜査した検察が自ら起訴の判断をした例は少なくない。事件・事故全体の真相の解明を刑事裁判に期待しすぎるのはよくないが、兵庫・明石歩道橋事故やJR宝塚線脱線事故のように、強制起訴で公判が開かれたからこそ、初めて知りえた重要な事実もある。

一連の司法制度改革の前は、刑事裁判の多くが起訴内容を確かめる場に矮小(わいしょう)化され、起訴権限を握る検察は独善的な体質に染まっていった。だが、ふつうの市民が裁判員や検察審査員として刑事手続きにかかわるようになってからは、法廷に新鮮な感覚と緊張感がもたらされた。

この流れを後戻りさせず、確かなものにする。審査会の改革はそんな意義ももっている。

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