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[産経新聞] 【主張】介護の縮小 場当たり改革は通用せぬ (2016年10月10日)

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安倍晋三政権が介護保険制度の将来像をどう描いているのかが見えてこない。来年の法改正に向けて、厚生労働省が軽度の「要介護1、2」を対象としたサービスの縮小を提案している。

掃除など生活援助を介護保険から切り離し、車いすのような福祉用具の貸与の自己負担を増やす案が出ている。

厚労省は「施設介護」から「在宅介護」へのシフトも推進していたのに、どういうことか。

安倍政権の介護政策はこれまでもちぐはぐさが目立った。

在宅シフトの一方で首相が号令をかけ、施設整備の拡大を図ることになった経緯があるが、希望者全員分を整えるのは困難だ。施設整備は不十分で、在宅介護を支えるサービスも縮小するというのでは、利用者が不安を抱くのは当然である。

要介護度の低い人の中には、身体的支援をさほど要しない認知症の人も多数含まれる。真にサービスを必要とする人まで利用できなくなるのはおかしい。

在宅サービスのカットが進めば家族の負担が増大することも考えねばならない。「介護離職ゼロ」に逆行しないか。1人暮らしや夫婦とも高齢者の世帯が増える。頼れる家族がいない人もいる。

介護財政の厳しさは増している。制度を維持するには、支払い能力に応じて負担し、優先度の高い人にサービスを重点配分する見直しを重ねていくしかない。

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生活援助には「重度化予防につながる」との評価がある一方で、「家政婦代わりに使っている」との批判も根強い。高止まりしている福祉用具のレンタル料の見直しも含め、無駄を徹底的に排除することも言うまでもない。

問題なのは、場当たり的な手直しの繰り返しによって、重度者、軽度者とも十分なサービスが受けられない状況に陥ることだ。

高齢化はこれから本番を迎える。今の調子でいくと、サービス範囲をどこまで縮小しなければならないのか。それに伴って、国民にどれだけの追加負担を求めようとするのか。明確な判断材料と選択肢を示さなければ、国民はいつまでも納得できない。

安倍首相が力を入れる「1億総活躍」との整合性も問われよう。他制度との関わりも含め、介護保険のあり方を総合的に考えなければならない。

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