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[読売新聞] 電通過労自殺 長時間残業の解消が急務だ (2016年10月13日)

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痛ましい過労自殺が後を絶たない。根絶に向けて、官民で取り組みを加速させねばならない。

大手広告会社・電通で昨年12月、新入社員の24歳の女性が自殺したのは、長時間労働による精神障害が原因だったとして、労災が認定された。

女性は、インターネット広告部門に所属し、残業や休日出勤が常態化していた。残業が月100時間を超えたこともある。昨年11月頃から「死にたい」と訴え、クリスマスの日に都内の社員寮から飛び降り自殺した。

「眠りたい以外の感情を失った」「もう体も心もズタズタだ」――。SOSのメッセージをツイッターなどで同僚らに送っていた。上司からは「君の残業時間は会社にとって無駄」などと、パワハラとも取れる発言があったという。

長時間残業が当然の職場で、厳しい叱責を受け続け、追い詰められていった様子がうかがえる。

電通では1991年にも、入社2年目の男性社員が過労自殺している。両親が起こした損害賠償請求訴訟で、最高裁が「会社は社員の心身の健康に対する注意義務を負う」との初判断を示し、各企業の対策強化の転機となった。

その教訓を忘れたのか。再発を許した会社の責任は重大だ。改めて防止策を徹底すべきだ。

2014年の過労死等防止対策推進法の施行後も、悲劇が繰り返されている。政府や他の企業も重く受け止める必要がある。

過重労働を強制する職場は、結果的に生産性が上がらない。

企業の代償も大きい。居酒屋チェーンを展開するワタミは、グループ社員の過労自殺を巡って、「ブラック企業」と批判されて業績が悪化した末、1億3400万円の支払いで遺族と和解した。

厚生労働省は先週、推進法に基づく初の過労死白書を公表した。過重労働によるうつ病などが原因の自殺として、15年度は未遂を含めて93人が労災認定された。

この数字は、過労自殺の「氷山の一角」に過ぎないとみられる。認定基準が厳しいためだ。警察庁の統計では、勤務問題が一因の自殺が15年は2159件に上る。

背景には、先進国の中でも最悪の水準の長時間労働がある。

白書によれば、過労死ラインとされる「月80時間超」の残業をした社員がいる企業が23%もある。業種によっては4割を超える。

政府の働き方改革実現会議は、今年度中に長時間労働の是正策をまとめる。働く人の命を守るため、実効性ある対策を示すべきだ。

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