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[東京新聞] 消費者団体裁判 制度を動かすために (2016年10月14日)

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悪徳商法など多発している消費者被害を救済する新たな裁判制度が始まった。特定の消費者団体が被害者に代わって加害企業の賠償責任を問う。制度を根付かせ、被害者の泣き寝入りを防ぎたい。

悪質な商法で購入契約をさせられた。語学学校の入学を辞退した際に、法外なキャンセル料を取られた−。多発する同じような被害をまとめて救済しようと、新たな集団訴訟制度が始まった。

首相の認定を受けた「特定適格消費者団体」が被害者に代わって原告となり、被害金を取り戻すための裁判を起こす。その手続きの根拠となるのが、今月施行された「消費者裁判手続き特例法」だ。

裁判は二段階で進められる。まず、消費者団体が事業者を訴える。事業者に賠償責任があると判断された場合に、次の段階として被害者が裁判に加わる。裁判所が個々の賠償額を確定し、被害金を取り戻していくという流れだ。

判断力の落ちた高齢者を狙った消費者被害も増え続けている。消費者をどう守るのか。被害の防止と救済は消費者行政の柱である。

だが、消費者が事業者に直接、被害金の返還を求めても、交渉力に圧倒的な差がある。裁判を起こすにも費用や手間がかかる。この点で交渉力のある組織が裁判の先頭に立てる仕組みは有効だ。類似制度はフランスにもある。

消費者団体が被害者に代わって原告となる裁判制度は二〇〇七年に創設されたが、不当な勧誘や契約をやめさせる請求はできても、賠償責任までは追及できなかった。新制度は積み残されてきた損害賠償に踏み込むものだ。

それでもなお課題は残る。被害金の返還に特化したため、精神的苦痛に対する慰謝料の請求は手続きの対象外とされた。

経済界には、大勢の被害者が裁判に参加すると経営に影響が出る、乱訴が心配だ、と制度の導入に反対する声もあった。だが、まともな企業がみだりに訴えを起こされるだろうか。不当表示でごまかしたり、欠陥製品を売らない。消費者と適正な契約を交わす。これは企業として当然ではないか。

「特定適格消費者団体」として認定を申請したのはまだ一団体のみ。被害金返還という大きな事務負担では活動を担える団体は限られるのだろうが、その数が少ないと訴訟の数も限られる。団体の体制整備を支援し、消費者が頼れる制度にしたい。

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