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[産経新聞] 【主張】電通の過労自殺 「命より大切な仕事ない」 (2016年10月15日)

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広告大手の電通で昨年12月、新入社員の24歳の女性が自殺したのは、長時間の過重労働が原因だとして、労災が認定された。東京労働局の過重労働撲滅特別対策班などは同社本社や支社の労働実態を調べるため、立ち入り調査に入った。

立ち入り調査は労働基準法に基づくもので、抜き打ちで行われた。違法な長時間労働が全社的に常態化していた疑いもあるという。悪質な法令違反がみつかれば、会社側の管理責任が問われ、刑事事件に発展する可能性もある。

同社では平成3年にも入社2年目の男性社員が過労で自殺し、最高裁は12年に会社側の責任を認める判決を出した。これが契機となり、過労自殺など国の判断基準が見直された。

だが、悲劇は繰り返された。若い社員が再び自ら命を絶つ事態を招いた反省に立ち、電通は労務管理体制を精査し、再発防止を徹底しなければならない。

政府は、長時間労働の是正を「働き方改革」の柱として位置づけている。過労を強いるような職場では生産性など上がるはずがない。実効性ある規制を打ち出す必要があろう。

昨春に電通に入社した女性社員は、試用期間が終わった昨年10月から残業時間が急増し、月100時間を超えて「過労死ライン」とされる80時間を上回っていた。激務が続き、「眠りたい以外の感情を失った」といった悲痛な叫びがツイッターに投稿されていた。

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女性は昨年のクリスマスに都内の社宅から飛び降りた。長時間労働で鬱病を発症していたとみられ、労働基準監督署が労災として認めた。記者会見した母は「労災認定されても娘は戻ってこない。命より大切な仕事はない」と過労死の根絶を訴えた。悲痛な母の叫びを、会社も政府も社会も、心して聴くべきである。

厚生労働省がまとめた「過労死等防止対策白書」によると、昨年度に過労自殺(未遂も含む)で労災認定されたのは93件だったが、勤務問題を原因の一つとする自殺は2159件にのぼった。労災認定は氷山の一角ともいえる。

同省の企業アンケートでは、残業時間が月80時間を超えた社員がいる会社は2割を超えた。今回の問題は電通だけでなく、長時間労働が広がっている産業界全体への警鐘と受け止めるべきである。

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