2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙の防止対策強化に、政府が動き出した。
厚生労働省が示した「たたき台」は、官公庁や運動施設での建物内禁煙や、悪質な違反者に罰則を科すことなどが柱だ。今後、関係する業界団体などの意見を聴いて詳細を詰める。
規制強化には自民党などから反発も出ているが、事務所(職場)や飲食店、駅などについて「原則建物内禁煙(喫煙室設置可)」としている点で、たたき台はまだまだ不徹底だ。
受動喫煙対策の先進国にならい、屋内全面禁煙の範囲をできる限り広げ、「屋内の公共の場は禁煙」という、わかりやすいルールの定着をめざしたい。
厚労省が15年ぶりにまとめた「たばこ白書」によると、たばこは喫煙者本人に肺や食道などさまざまながんや循環器疾患、呼吸器疾患、早産などをもたらす。受動喫煙した家族や同僚にも肺がんや虚血性心疾患、脳卒中、小児ぜんそく、乳幼児突然死症候群などのリスクを高めていることが確実という。
世界では喫煙が原因で年に約500万人、受動喫煙で約60万人死亡していると推計されている。日本では喫煙で約13万人、受動喫煙で約1万5千人が命を落としているとされる。
世界保健機関(WHO)はたばこ規制枠組み条約を作り、たばこによる健康被害を減らそうと懸命だ。日本も条約に加盟しているが対策が総じて甘い。受動喫煙防止でも、49カ国(人口計約13億)が公共の場の屋内全面禁煙を法律などで罰則付きで定めているのに、日本は努力義務にとどまり、WHOから最低レベルと判定されている。
このままでは、WHOと国際オリンピック委員会が共同で推進し、08年以降の開催地・開催予定地がめざしてきた「たばこのない五輪」で、日本の立ち遅れが際立つことになる。
たたき台が、医療機関や小中高校を敷地内禁煙としている点は評価できる。だが、喫煙室設置で例外を認める場所が多すぎる。「全面禁煙以外の措置は、受動喫煙を防ぐものとして不完全」とクギを刺すWHOの指針に沿っているとは言いがたい。
簡易な仕切りでは煙は流れ出る。長い年月を過ごす職場の対策が不足すれば、他の施設の対策は台なしだ。気密性が高くても飲食店などで従業員が掃除で出入りすれば煙にさらされる。
国民の健康を最優先に考え、政府は屋内全面禁煙の範囲をできるだけ広げるべきである。
厚生労働省が示した「たたき台」は、官公庁や運動施設での建物内禁煙や、悪質な違反者に罰則を科すことなどが柱だ。今後、関係する業界団体などの意見を聴いて詳細を詰める。
規制強化には自民党などから反発も出ているが、事務所(職場)や飲食店、駅などについて「原則建物内禁煙(喫煙室設置可)」としている点で、たたき台はまだまだ不徹底だ。
受動喫煙対策の先進国にならい、屋内全面禁煙の範囲をできる限り広げ、「屋内の公共の場は禁煙」という、わかりやすいルールの定着をめざしたい。
厚労省が15年ぶりにまとめた「たばこ白書」によると、たばこは喫煙者本人に肺や食道などさまざまながんや循環器疾患、呼吸器疾患、早産などをもたらす。受動喫煙した家族や同僚にも肺がんや虚血性心疾患、脳卒中、小児ぜんそく、乳幼児突然死症候群などのリスクを高めていることが確実という。
世界では喫煙が原因で年に約500万人、受動喫煙で約60万人死亡していると推計されている。日本では喫煙で約13万人、受動喫煙で約1万5千人が命を落としているとされる。
世界保健機関(WHO)はたばこ規制枠組み条約を作り、たばこによる健康被害を減らそうと懸命だ。日本も条約に加盟しているが対策が総じて甘い。受動喫煙防止でも、49カ国(人口計約13億)が公共の場の屋内全面禁煙を法律などで罰則付きで定めているのに、日本は努力義務にとどまり、WHOから最低レベルと判定されている。
このままでは、WHOと国際オリンピック委員会が共同で推進し、08年以降の開催地・開催予定地がめざしてきた「たばこのない五輪」で、日本の立ち遅れが際立つことになる。
たたき台が、医療機関や小中高校を敷地内禁煙としている点は評価できる。だが、喫煙室設置で例外を認める場所が多すぎる。「全面禁煙以外の措置は、受動喫煙を防ぐものとして不完全」とクギを刺すWHOの指針に沿っているとは言いがたい。
簡易な仕切りでは煙は流れ出る。長い年月を過ごす職場の対策が不足すれば、他の施設の対策は台なしだ。気密性が高くても飲食店などで従業員が掃除で出入りすれば煙にさらされる。
国民の健康を最優先に考え、政府は屋内全面禁煙の範囲をできるだけ広げるべきである。